フランスの国民議会(下院)の第1回投票が30日に迫ってきた。来月に入れば4日に英国の総選挙、7日にはフランス下院の決選投票が行われる。ちなみにこの日は東京都知事選の投票日でもある。価値観を共有する西側陣営にとってはいずれも大事な選挙。有権者は次の4年間をどの政党に託すか、間近に迫った選挙の結果次第で、民主主義の近未来が多少見えてくるかもしれない。だが、気になることもある。11月に予定されている米大統領選挙を含めて、いずれの選挙も争点は内政問題に集中している。どの国の有権者もインフレ、年金、移民といった内政問題に関心が集中、ウクライナ、ガザでいまも繰り広げられている凄惨な戦争は選挙の争点にすらなっていない。この間、ロシアと北朝鮮は首脳会談を行なって「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。これは端的にいって両国の安全保障条約だ。

ロシアのウクライナ侵攻が本格化して以来、N A T Oも結束を強化、対ロシア戦略の高度化を図っている。最近では西側が提供した兵器を使ったロシア領内への攻撃も容認するまでになった。トランプ陣営の反対によってウクライに対する武器供与が滞っていた今年の前半に比べると、西側の結束はかなり強化されたように見える。その一方でプーチンは「戦略核兵器の先行使用の可能性」にまで言及し始めている。背景には「プーチンの知恵袋」と言われている政治学者のセルゲイ・カラガノフ氏が主張する「戦略核の強化」といった発想があるのかもしれない。プーチンはすでに側近の提言に基づいて行動している可能性がある。邪推だが北朝鮮との安保条約の締結は、武器・弾薬の提供にとどまらず核戦争を展望した相互安全保障の強化ではないか。仮にこれが事実だとしたら価値観を共有する西側陣営に対抗策はあるのだろうか。バイデン大統領はいまだに戦争拡大阻止にエネルギーを集中しているように見える。

戦争拡大を推奨しているわけではない。戦争の抑止力は現時点では「目には目を、歯には歯を」という強硬策でしか発揮できないのではないか。バイデン大統領がプーチンの恐喝に“弱腰”で対抗している限り、プーチンは戦争を止めようとしない。これがここ数年間の現実だ。マクロン氏はまるで思い付きのように「ウクライナへの軍隊派遣」を言い出した。その途端に支持率が低下。7日に結果が判明する下院選挙では第1党から第3党に転落する危機に直面している。選挙を考えると西側陣営での「核抑止力の強化」はタブーだ。選挙は必然的に内政問題に集中しやすくなる。それはそうだろ。ロシア、北朝鮮、中国といった強権国家の独裁的に比べると、西側の指導者は不利な立場に立たされている。バイデン氏は“弱気”で、トランプ氏は“同盟国無視”のM A G A一辺倒。西側にはプーチンに対抗できる指導者が見当たらない。かくして西側の危機が日に日に深まているような気がする。

Xserverショップ