円が再び下げ足を早めている。ロイターによると財務省の神田真人財務官は26日、足元の為替相場について「最近の急速な円安の進行に関しては深刻な懸念を有しており、高い警戒感をもって市場の動向を注視している」と語った。同日夜、財務省内で報道陣の取材に応じた。行き過ぎた動きには「必要な対応を取っていく」と強調した。円売り派に対して「介入するぞ」と脅したわけだ。だが、天下の財務省、円相場を司る財務官の脅しに円売り派は怯まなくなっている。そりゃそうだ。嘘か本当かわからないが、市場では政府・日銀が介入に踏み切る水準は162円から165円の間だろうとの観測が、まことしやかに流れている。162円までは安心して売ろう、神田氏が投機筋として忌み嫌う円売り派は安心して円を売っている。それを眺めながら政府・日銀は円売り派の傍若無人な振る舞いを見守るしかない。要するに舐められているのだ。カリカチュア以外の何物でもない。

少し前、イエレン長官が率いる米財務省は日本を為替の「監視リスト」に追加した。4月から5月にかけて行った為替介入を意識した動きだろう。当のイエレン氏は依然として「介入は極めて稀なケース」と日本の介入を牽制している。そんな中での円急落。神田財務官は米国の動きに関係なく、「総合的に勘案して必要な場合にはしっかりした対応を取る」とメディアの前で強調している。おそらく米国に限らず主要各国と水面下で、介入に向けた調整をしているのだろう。了解を得た上で介入するのか、独自の判断で単独介入に踏み切るのか拱手傍観、思案投首といったところだ。個人的には介入しても円安は止まらないと思っている。当面唯一の円安防止策は米国が政策金利を引き下げるか、日本がこれを上げるかのどちらかだが、パウエルF R B議長は今のところ利下げ先送り論に傾いているように見える。結局日銀が独自の判断で政策金利を引き上げるのが一番現実的だ。

植田日銀総裁は前回の金融政策決定会合(6月13日〜14日)で市場が期待していた国債の買入額削減を見送った。政策金利の引き上げに相当する国債の量的緩和の縮小策だが、どうしたわけか実施しなかった。代わりに7月の金融政策決定会合で実施する旨を表明している。どうして見送ったのか理由は定かではない。メディア出身の某大学教授は「岸田総理との間で何らかの合意があるのではないか」と推測していた。多分そうだと思う。岸田総理の裏で糸を引いているのは財務省だろう。それを象徴するのが骨太の方針(2024年版)に盛り込まれたP Bの早期黒字化ではないか。個人的に勝手に邪推している。要するに政府・日銀にとって円安は居心地がいいのだ。だが円安歓迎とは口が裂けてもいえない。だから有名無実化かしつつある「P B黒字化」を錦の御旗に、円安防止に前のめりになっている植田総裁の足を引っ張っているのでは・・・。政府・日銀、どこまでも無策だ。

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