生成AIはすでに様々な分野で活用されているが、経済指数にもユースケースが広がっている。ブルームバーグによると米国のゼータ・グローバル・ホールディングス・コーポレーションは1日、「ゼータ経済指数の公表を開始した」と発表した。この指数は「オンラインとオフラインで(消費者の)行動を追跡し、自動車や飲食、金融サービス、ヘルスケア、旅行などの分野における関心と購入意欲を測る」ものという。各種経済データの精度は現時点では必ずしも高いわけではない。調査票やヒアリングといった形式で人間が集めたデータを、データ解析の専門家が調整し政府や日銀、金融機関、あるいは学者や投資家などが自分の判断に基づいて利用する。いわば人間による人間のためのデータなのだが、データの収集・解釈の過程にどうしても人間のバイアスが入ってしまう。

ゼータ社のデービッド・A・スタインバーグ最高経営責任者(CEO)によると、今回発表することになった指数は、「実際の消費動向と、消費前の状況を調べ、情報すべてをアルゴリズムに取り込み、他の通常のデータポイントの上に重ね、より優れた予測を導き出すことができる」と強調する。これだけでは何のことかよくわからないが、「この指数は620万もの出版社サイトからのデータなどに基づいており、景気はまだ順調に推移しているにもかかわらず、先月はより慎重な消費へとシフトしていることを示した」と説明する。要は人間の手では処理できない大量のデータをアルゴリズムに取り込み、データの精度を飛躍的に高めたということだ。大量のデータを集め、消費前の状況を加味して実際の消費活動を測定すれば、消費の実態がより鮮明になるというわけだ。素人考えに過ぎないがAIの技術が進歩すれば、データの精度は飛躍的に向上しそうな気がする。

世の中ではすでに水面下で、熾烈なビックデータ戦争が展開されている。「ゼータ経済指数」の発表もその一環だろう。この競争はどこに行き着くのだろうか。生成AIのブームに火をつけたオープンAIのサム・アルトマンC E Oは、「人間の労働はいずれ生成AIを組み込んだロボットがすべて行うようになる」と予言しているそうだ。そうなる保証はどこにもないが、仮にそうなったら人間は何をするのだろうか。私個人はいまだに怠け者気質が抜けきらないが、働かなくていいと言われるとやけに働きたくなるから不思議だ。おそらくこれがAIの将来に付きまとう光と影だろう。AIを使ったビックデータが実体経済を過不足なく映し取ることができるようになった時、人類の経済運営はスムーズになるのだろうか。積極財政か財政再建か、人類が直面する“難題”は解決できるのだろうか。その答えが知りたい。

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