七夕選挙となった都知事選挙が終了して1週間以上経過した。結果もさることながら、開票直後からテレビやインターネットの話題を独り占めしたのが「石丸構文」と称した石丸批判である。何が問題なのか?この週末ネットで関連情報を読んでみた。是もあり非もあるが、総じていえば石丸批判の方が多い印象を受けた。もとより政治の世界である。テレビ局やオピニオンリーダー達が批判するのは当然だろう。日本には限りなき表現の自由がある。誰が何をどう批判しようが、表現としての批判に文句をつけるつもりはない。精神科医の片田珠美氏は石丸氏を評して、「無自覚型ナルシスト」(7/13付デイリー新潮)の傾向が窺えると指摘する。質問者を圧するような答弁の仕方を捉えた「石丸構文」は、パワハラに通じると説く人もいる。市長時代の石丸氏は、質問も発言もしない議員が議場で寝ているのをみて「恥を知れ、恥を」と恫喝していた。米大統領候補のトランプ氏に似ている。ナルシストもパワハラも、政治家に共通する資質なのかも知れない。

それはそれとして、自民党の裏金づくり、小池都知事の学齢詐称問題や相次ぐ刑事告発、こうした環境下で行われた都知事選である。国民の間に渦巻く政治不信にどう応えるか、それが問われた選挙でもあった。結果は周知の通り。既成政党の支持を受けない石丸氏が165万票を獲得して小池氏に次ぐ第2位の票を集めた。どうして石丸氏は蓮舫氏を上回る票を集められたのか?既成の政治勢力にない発想、ネットとリアルを融合した選挙戦術など、有権者から見れば爛れた昨今の政治情勢に “新しさ”を持ち込んだからではないか。新しい人材による新しい政治。小池氏は「萩生田百合子」と書かれた批判派のプラカードが象徴するように、裏金の自民党と一体化していた。対する蓮舫氏、せっかく離党したのに無党派層を無視するかのように共産党が必要以上に前面に出すぎていた。都知事選は結局、既成政党対石丸氏の戦いだったのではないか。選挙のプロから見れば石丸氏は、“ど素人”に近い候補者だった。だが、それが結果的に奏功した。

石丸陣営の選対事務局長を務めた選挙のプロ、藤川晋之助氏が朝日新聞のインタビューに応じている(7月12日付)。「街頭演説を200回超やったが、特徴的なのは、細かい政策を全く言わないことだった。『小さな問題はどうでもいいんだ』といって、『政治を正すんだ』という話をずっとやり続けた。それでも来る人の8、9割は『すごい』と言って帰っていく。たいして演説はうまくないし、政治の現場を知る人たちからは『中身がない』と批判ばっかりだった。だが、彼はそれを含めてわかってやっている」。冒頭に引用した片田氏は「今回の『石丸現象』は、日本の政治状況という腐敗した土壌によって生み出されたといえるのではないか」と指摘する。その通りだと思う。だが石丸氏を批判するテレビ局、そこに媚を売るオピニオンリーダーたちは、“選後”になって急に石丸批判を声高に叫び始めた。「政治は糺さなくていいのか」、気になる日本のもう一つの実態だ。