週明けの昨日、世界中で株価が大波乱となった。株式市場だけではない。金融市場全体が突如、不安の坩堝に投げ込まれた。N Yダウは1000ドルを超えて急落、日経平均は4451円安の大暴落で過去最大の下落幅となった。今朝は前日の反動で急騰しているが、市場の先行きはもう少し様子を見ないとわからない。一時的な急落で済むのか、構造的問題が絡んでいるのか、専門家も俄かには判断できないだろう。個人的な印象では日米の暴落は似て非なるもののように見える。米国はおそらく一時的な現象だろう。一方日本は円安から円高への経済運営転換の準備がまったくできていない。株式市場の大波乱は米国よりも日本の方が深刻に見える。円安から円高への政策転換について政府・日銀、自民党など政策当事者間の合意、あるいは情報共有がまったく見られないのだ。要するに将来展望なき場当たり的な経済運営に、マーケットの不安と不満が昂じているのだ。

米国ではパウエルF R B議長の政策判断が、実体経済の動きに対して後手に回っているとのマーケットの不安が表面化した。コロナのパンデミックが終焉すると同時に国際的に物価が上昇し始めるが、当時、パウエル議長は「これは一時的な現象」との公言していた。イエレン財務長官などバイデン政権もこの見解を共有、利上げはロシアのウクライナ侵攻直後の22年3月にずれ込んだ。この時に類似した現象が7月のF O M Cで再現した。データにこだわるパウエル氏は景気後退が加速する実体経済の動きを見誤ったのではないか。マーケット筋は買いのポジションを一気に手仕舞い、売りが売りを呼ぶ展開に。これでN Yダウは大暴落した。要するにタイムラグのあるデータにこだわるあまりに、足元の実態経済に関する判断で後手を踏んだとマーケットは判断したのだ。だが、経済データは常にタイムラグをともなっている。そのデータを元に経済の実態をどうやって予測するか、これは世界中の政府や中央銀行に共通する難題でもある。

日本の暴落は米国の経済指標の下振れに怯え慄いた市場筋の狼狽売りが原因だろう。市場筋が判断を間違ったわけではない。円安維持か円高への転換か、政府・日銀の曖昧な政策運営が市場の不安心理を増幅しているのだ。円高の共通認識があれば、総合的な経済対策が必要になる。だがそんなものはどこにもない。良い悪いは別にしてアベノミクスは「円安誘導」で政府・日銀が一致していた。岸田政権は円高誘導の責任をすべて植田日銀に委ねている。経済政策としては「円安誘導」より「円高誘導」の方がはるかに難易度は高い。政府・日銀は難易度の高い政策を選択したのかどうかも、実はよくわからない。総合対策もないまま10数兆円を使って円高介入を行なっている。こうした場当たり的な対応が市場の不安心理を累積させている。鈴木財務大臣はいつものように「日銀とも連携しつつ、経済財政運営に万全を期す」としか言わない。この人、経済担当大臣としては失格だろう。岸田政権と日銀が不安と不満を増幅している。

※一部語句を7日に修正。「遅効性」を「タイムラグ」に書き換えました。

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