トランプ前大統領は8日、同氏の邸宅「マールアラーゴ」で開いた記者会見で、大統領に返り咲けば、FRBの独立性を弱めることを目指す意向を示した。ロイターが伝えている。その理由が凄い。「私の場合、大金を稼ぎ、大成功を収めた。多くの場合においてFRB当局者や議長になるような人物よりも優れた直感を持っている」と。金融政策は「直感だ」と強調するあたりが、いかにもこの人らしい。日本の総理大臣候補が同じことを言えば、主要メディアやネットで猛烈な反撃を喰らうだろう。「大金を稼ぎ、大成功を収めた」、こういう自慢話自体が日本では通用しない。だがトランプ氏は違う。ビジネスで成功したものの方が、金融政策をうまくコントロールできると主張する。だから民主党のハリス副大統領や同氏とコンビを組むワルツ・ミネソタ州知事(副大統領候補)に「奇妙(weird)」と揶揄されるのだろう。

余談はさて置くとして、トランプ氏の発言の趣旨は「FRBの独立性低下を目指すことが狙いだ」とロイターは解説する。同氏が大統領になれば「FRBはホワイトハウスの審査を受けるようになり」、中央銀行としての独立性が制限されると指摘する。ロイターによると大統領選挙の支持率は直近でハリス氏が42%、トランプ氏37%で、その差は拡大している。銃撃事件直後に一時「もしトラ」は「確トラ」に昇格した。だが、バイデン撤退のドンデン返し受けていまや「だめトラ」の危機が迫っている。だからF R Bの権限縮小の可能性は小さいのかもしれない。とはいえ、逆から見ればこのエピソードは、米中央銀行の独立性を証明する証でもある。ロイターの記事を読みながら日銀の独立性はどうなっているのか、そんな思いが頭をよぎった。直近の金融市場大波乱劇を見た直後だけに余計気になった。

状況証拠を見る限り、日銀に独立性はないというのが結論だ。30日〜31日に開かれた金融政策決定会合で政策金利は0.25%まで引き上げられた。これを受けて5日、6日と株価が大暴落する。すると7日に日銀の内田真一副総裁が、函館で開いた講演会で「(この先)市場が不安定な状況で利上げすることはない」と発言、不安心理の抑制に努めた。直近の動きだけを見ると、ごく当たり前の政策対応に見える。だが、3月の決定会合で異次元緩和に終止符を打ったあとの4月、5月の決定会合で利上げを見送り、7月の会合では円相場が円高に振れる中で強引に利上げを行ったように見える。この数ヶ月間に何があったのか。なだらかな利上げを目指した日銀に政府がブレーキをかけ続けていたのではないか、そんな印象を受けるのだ。だとすれば、利上げしたくて利上げできない日銀に独立性があるとは言えない。日銀に本当に独立性はあるのだろうか・・・

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