9月23日に投開票の立憲民主党の代表選挙に枝野前代表が立候補を表明した。記者会見では立候補の理由を以下のように説明している。「古い政治に終止符を打ち、新しい時代へ向かって進む時だ」、「この国のあるべき姿や党が進むべき道を、自信を持って掲げていくことが私の役割だ」、「逃げることなく時代の転換の先頭に立つのがわたしの使命だ」。いずれもNHK記事からの引用。この記事を読んだ率直な印象は「おいおい、ちょっと待てよ、枝野君。昔の名前で出ちゃダメだよ。3年前の衆議院選挙で議席を減らした責任をとって代表を辞任した君が、どうしてたった3年で『古い政治に終止符を打つ』と言えるのか。時代はもっと激しく変化している。変わらない君が『時代の先頭に立つ』なんて言えるの、時代認識がズレてる、いや間違ってる」。ざっとこんな感じだ。おそらくこれは枝野氏個人の認識ではないだろう。立憲民主党の底流を支配する党全体の認識ではないか。

メディアの報道によると枝野氏の他に現代表の泉氏、総理経験者の野田氏、元代表の江田氏、元国交相の馬渕氏が出馬を検討していると報じられている。いずれも「昔の名前」に属する人たち。自民党の乱立がいいと思っているわけではない。だが、裏金疑惑に揺れる自民党から政権を奪取する可能性がある総選挙が次に控えている。否応なく政党の刷新感が問われる代表選挙だ。にもかかわらず、相変わらずの旧態依然の候補者たち。候補者乱立の自民党はそれでも形式的な派閥解消の流れに乗って40代の小林氏が立候補、小泉氏も立候補に名乗りをあげようとしている。立民の若手はどこに行ったのか。NHKによると党内の中堅・若手議員の有志や地元の千葉県連に所属する議員らは、相次いで野田氏に立候補の要請をしたとある。国会議員の数が自民党に比べて圧倒的に少ないとはいえ、「昔の名前に頼る」若手や中堅も頼りない。野田氏や枝野氏は本来なら若手を押し上げる役割を担うべきではないか。

誤解を恐れずにいえば選挙では常にムードが先行する。自民党総裁選は候補者の乱立と若手の立候補でムードは圧倒的に立民を上回っている。政治に関心がなくも見ていて面白い。米大統領選挙で分裂していた民主党はバイデン氏を引きずり下ろし(一種のクーデター)、ハリス副大統領に候補者をすげ替えた。これで党内が一致団結しているという“擬制の一体感”を演出しムードを盛り上げている。自民党の総裁選も候補者乱立の裏で蠢いているのは、岸田総理以下党内長老の権力争いである。枝野氏はそんなムード作りは歯牙にも掛けない。政策一本槍だ。「国公立大学の授業料の段階的無償化や、大学の基礎研究の助成などを大幅に引き上げること、それに消費税5%分の実質的な減税策として、中間層までを対象にした『給付付き税額控除』を創設する」など、公約を前面に打ち出している。総選挙に勝たなければ政策など絵に描いた餅だ。大丈夫か立憲民主党、そんな気がする。