中国軍は先月26日と31日、矢継ぎ早に日本の領空と領海を侵犯した。領空・領海侵犯は国際法上の違法行為だ。防衛省の発表によると、26日に日本の領空を侵犯したのは中国軍の「Y-9」情報収集機1機。民間機などが日本の領空や領海を侵犯するケースは度々あったが、軍用機による審判は初めてだという。これに対して日本側の対応は自衛隊機が緊急発進(スクランブル)して警告。外務省の岡野事務次官が中国の施泳臨時代理大使を外務省に呼び、厳重に抗議するとともに再発防止を求めた。岸田総理からの発言は特になし。折から中国を訪問していた日中議員連盟の二階会長が、中国側要人との会談の中で形式的に抗議した程度。会談後の写真撮影に、にこやかに応じ要人と握手。折から自民党内では27日投開票の総裁選が始まっている。だが、立候補を表明している候補者の反応は鈍かった。唯一反応したのは高市氏ぐらいか。

高市大臣は自身のSNSに次のように投稿した。「外務省の局長から中国大使館公使への抗議だけで終えて良い話ではない」と。その上で「総理大臣、外務大臣、防衛大臣から、それぞれのカウンターパートに対して厳重抗議するべき事態であり、再発防止を約束させなければならない」と強調したという。YouTubeの情報をT B Sが伝えている。総裁選への出馬を見送ったとはいえ、岸田総理は何をしていたのか。台風10号が異常に遅い速度で北上。九州、中国地方にとどまらず静岡や東北に大きな“遠隔被害”をもたらしていた。台風への備えを優先したのかも。だからといって国家の安全保障に関わる重大事項を漫然と見送っていいわけがない。北朝鮮による拉致問題はいまだに解決の糸口すら見つからない。これで独立国家と言えるのか、平凡な一生活者としても気になるところだ。

中国側の狙いはなんだろう。総裁選の影響で権力中枢が弛緩しているのでは。それを確かめようとした。総裁選がなくても政府・自民党は形式的な対応しかしてこなかった。総裁選のテーマは“刷新感”。今回の事態は表紙を変えても中身は全く変わらない自民党を象徴しているようだ。異常な台風の影響で日本中にイライラ感が蔓延していた。こんな時に領空・領海を侵犯したら日本はどんな反応をするのか。日本の危機対応を探る千載一遇のチャンスではないか、そんな思いが中国軍の中枢に芽生えたのかもしれない。だとすればこれ以上にない成果を得られただろう。日本の政治家は誰も反応しない。「組みやすしだ。ただし、高市には注意しろ」。も一つの可能性。中国経済が悪化の度を増している。新卒大学生の失業率は一向に改善しない。国民の不満は高まる一方だ。習近平主席に批判が集まっているとの報道もある。例によって例の如く、人民の目を外にそらそうとしているのかも。いずれにしても与党政治家の能力が問われる事態が起こっている。