ブルームバーグ(Bb)が2日伝えたところによると、ドイツを代表する自動車メーカーのV W(フォルクス・ワーゲン)が国内工場の閉鎖を検討しているという。理由は簡単。激しい競争を勝ち抜くためのコスト削減が目的だ。自動車業界はE V(電気自動車)や自動運転車の開発を目指して、熾烈な競争を繰り広げている。排ガス規制などただでさえ厳しい開発競争にさらされているうえ、テスラをはじめ中国系の新規参入が相次いでおり、大手といえども経営環境は決して楽ではない。そんな中でドイツを代表する大手メーカーのV Wが、国内工場の閉鎖を検討しているというのだ。ドイツといえば企業の競争力が売り物である。競争力に比べ共通通貨であるユーロは、ドイツからみると常に割安に放置されてきた。そんな外部環境に支えられて同国のG D Pは日本を抜いて世界第3位に浮上したのだ。

記事によるとV Wは全世界で65万人を雇用している。うち30万人が国内雇用。国内工場閉鎖で30万人の雇用が消失する。対象となるのはV Wの本体だけではない。V Wブランドに連なる関連企業も対象になる。これが実現するとグループ全体で一体、どれくらいの雇用喪失になるのか、そこまでの詳細な説明は記事中にない。並行して2029年まで雇用を保証するという労働組合との協定も、打ち切りを目指すというのだ。これはただごとではない。労働組合の反発は必死だ。シュルツ政権の存続関にもかかわってくるかもしれない。労働組合との今後の交渉が注目されるが、世界経済への影響も心配だ。V Wとは関係ないが、昨日、N Yダウは前日に比べ626ドル急落した。8月のISM製造業総合景況指数が予想を下回ったことが直接的な原因だが、世界経済にもジリジリと景気後退の影が忍び寄っている。

世界経済はこれから先どこに向かうのだろうか。国内工場の閉鎖といえば、少し前まで先進国が競っていたグローバリズムの延長線上にある動きだ。米国のトランプ氏が提唱しているM A G Aは、反グローバリズムだ。海外に移転した工場を国内に呼び戻そうとする主張でもある。V Wが検討を始めた国内工場の閉鎖、あるは海外に設置した工場へのシフトは、トランプ主義とは真逆の動きだ。先進国からみれば、一旦始まった国内の空洞化を反転させることは、非現実的だということかもしれない。いくら円安が進んでも、中国に移転した企業の工場は国内に回帰しない。国内工場の閉鎖を検討し始めたV Wの動きは、グローバリズムがこの先も続くと言っているかのようだ。だが、労組の反発は目に見えている。フランス国民議会選挙を見るまでもなく、E Uではこのところ右傾化と左傾化が同時進行している。グローバリズムはどっちの味方なのだろう。

<参考>

▽VWがドイツ国内工場の閉鎖検討、実施なら史上初-コスト削減で<bloomberg日本語版>2024年9月2日 22:24 JST