茂木敏充幹事長は4日、自民党総裁選への立候補を表明した。都内で記者会見を行った。岸田政権の幹事長だが、裏金疑惑の解明には幹事長としての職責を放棄したかのような対応だった。岸田総理とも折り合いが悪く当選10回、閣僚や党三役の経験も豊富なベテラン議員としては、影の薄い存在だった。個人的にはそんな気がする。その幹事長の選挙公約を見てちょっと驚いた。「増税ゼロ」を推進し、国民一人ひとりの「所得、年収をアップさせることを政権の最優先の目標に掲げる」と宣言したのだ。政治改革については「まったく新しい自民党をつくっていく覚悟を示し政治改革と党改革を断行する」と宣言。具体的には政治資金パーティーに課税し、政策活動費の「廃止」をぶち上げた。「大胆公約・豹変」(時事通信)と形容するメディアもあるが、主要メディは会見内容に無反応。多くのメディアは無視している。ここに主要メディアの本音を見た気がする。

増税ゼロの中身も鮮烈だ。岸田政権が決めた「防衛力の抜本的強化のための増税」と、少子化対策強化のための支援金として使う予定の「保険料の追加負担」、それぞれ1兆円を停止する考えを示したのだ。これは岸田総理並びにこれを取り巻く財務省など、国家中枢に対する批判でもある。信頼回復に向けた政治改革をめぐって対立していたと思っていたのだが、実はもっと基本的な政策で岸田氏とは相容れなかったのかもしれない。増税ゼロは大いに結構だ。では財源はどうする。「経済成長により見込まれる税収増やいわゆる外為特会など税外収入の増加などを当てる」と答えている。さすが政策通のベテラン議員だ。きちっとポイントを押さえている。税外収入は外為特会だけではない。年金積立金管理運用独立行政法人(G P I F)の含み益は100兆円規模に達している。企業の内部留保は500兆円を超えている。日本は世界一の資産大国なのだ。これを活用するだけで目先必要な財源はいくらでも湧き出てくる。

財源に加え政治を刷新するための改革はどうするのか。パーティー券課税と政策活動費の廃止には驚いた。本当にできるのか。無責任なことを言えば茂木氏を一度総裁・総理にしてみて、その指導力を試してみたいものだ。この人は草の根の政治家でもある。庶民に近いところでの生活感もあるだろう。閣僚経験も豊富だ。外務大臣も政調会長も歴任している。トランプ前大統領からは「タフネゴシエーター」の評価も賜っている。欲を言えば諸悪の根源ともいうべき消費税の減税を公約して欲しかった。政治改革で一番大事なのは情報開示だ。パーティー券の課税も悪くないが、本質的なことを言えば収入と支出の開示、いわゆる透明度の確保だ。全ての情報が開示され、課金の対象になれば上限など設ける必要はない。政治活動に必要な資金はいくらでも集めればいい。良きせ政治を行うためには人もカネも必要だ。収入も支出も不透明だから不信感が募る。「報道しない」メディアもしかり。