米大統領選挙でハリス氏もトランプ氏も色々な政策目標・公約を連発している。これが国民にとっていいことなのか、悪いことなのか、実のところよくわからない。両氏とも思いつきで発言している印象が強いうえ、対立候補との違いを強調するための口先トークの可能性もある。いずれにしても両候補の真意や本音は掴みづらい。昨日トランプ氏が表明した「政府効率化委員会」の設立もその一つだ。しかも、トップにはイーロン・マスク氏が就任するという。同氏も了解済みらしい。反トランプだったマスク氏がいつ親トランプに豹変したのか知らないが、ロイターによるとマスク氏は「機会があれば、米国に貢献できることを楽しみにしている」とXに投稿した。「報酬、肩書き、評価は必要ないと述べた」とある。小さな政府を掲げる共和党にとってはあるべき委員会なのかもしれないが、何をやるのかいまのところ不明だ。

ロイターの記事には「トランプ氏はニューヨークのエコノミック・クラブで講演し、『連邦政府全体の全面的な財政とパフォーマンスを監査し、抜本的な改革を提言する責務を負う政府効率化委員会を設立する』と述べた」とある。米国にも政府予算を監査する組織はあるのだろう。だが新設の委員会は「抜本的な改革を提言する責務を負う」とある。この記事を見て直感的に感じたのは肥大化した政府の効率化、合理化を進め、市場機能を強化するのではないかということだ。小さな政府を掲げている共和党らしい委員会かもしれない。ロイターは「具体的な運営などについては明確にしなかったものの、設立後6カ月以内に『不正行為や不適切な支払い』を排除する計画を策定する」という。このアイデアはもともとマスク氏の発案らしく、トランプ氏がそれに応じ、マスク氏がトップ就任を受け入れたという経緯のようだ。

米国の政府予算は2025年度(2024年10月〜2025年9月)で1000兆円を超える水準にある。24年度予算で110兆円を超えた日本政府のおよそ十倍の規模だ。日米を問わず政府予算はどの国でも拡大傾向にある。なんとかこれに歯止めを掛けたい、これが西側陣営に属する政府の共通した願望だろう。トランプ+マスクの「政府効率化委員会」も多分認識は一緒だろう。設立後6カ月以内に計画を策定するというから、対象になるのはバイデン政権の4年間の実績だ。ということは民主党いじめが狙いかもしれない。相次いだ訴訟提起で苦しんだトランプ氏の意趣返しか。ひょっとすると民主党系の官僚はこの公約に不安を感じるかもしれない。これが実現すれば、大統領の所属政党が変わるたびに同じことが繰り返されることになるかも。堂々巡りだ。だとすれば、これも政党政治の限界だろう。