12日に告示され自民党総裁選は今日で5日目を迎えた。この間、野党第1党の立憲民主党の代表選挙も同時並行で実施されている。裏金疑惑をめぐる政治不信がピークに達する中で行われる与野党第1党の代表者選び。さぞ激論が戦わされるのではと思いきや、大胆な政策提案は全くなく論戦は低調の極みといったところだ。もともと期待していないのだから「何をいまさら」と、自己批判めいた声がこころの奥で鳴り響く。というわけでもないのだが、総裁選に出馬した9人の政策公約に一通り目を通してみた。候補者が9人もいると公約を調べるだけで一仕事になる。一通り目を通した程度に過ぎないが、公約集の分厚い人、薄っぺらな人、さまざまだ。だが、内容はどの候補者も似たり寄ったり。大胆な公約をぶち上げている候補者はほとんどいない。言ってしまえば皆ドングリだ。
際立った公約は「増税ゼロ」を打ち上げた茂木氏ぐらいか。増税しないまでも減税を公約に掲げた候補者は皆無。茂木氏を除けば財政運営は相変わらず財務省頼りだ。積極財政の高市氏ですら「P B規律が目的化すれば、国力が低下する」と指摘する程度。大胆な財政出動を掲げる候補者はいない。政治改革に絡んだ「政策活動費」の廃止は、多くの候補者が足並みを揃えた。誰が新総理になってもこれだけは実現するだろう。賃上げの継続、経済成長、少子化対策、物価対策など主要な経済政策で大きな違いはほとんどない。憲法改正もどの候補も賛成だ。強いてあげれば主要メディアが3強の1人にあげている小泉氏が「国民投票を総理の判断で実施する」とぶち上げた。個人的にはそれでいいと思う。議論のための議論を続けるよりも総理の大胆な行動が必要になることもある。主要メディアは早速「野党の反発を招く可能性がある」と警鐘を鳴らず。そんなことを言っていたら政治改革など実現しない。
対米追随も一緒。外交の独自性を主張する候補者は皆無だ。危機管理、災害管理にも目新しい公約はない。復興庁を危機管理庁に格上げする案でほぼ揃っている。拉致被害者対策はあっても触れる程度。言及しない人が大半だ。行政組織の大胆なスリム化といったアイデアはまるでない。すべての政策は既存の路線の延長線上にしかない。政治改革として何をやりたいのか、有権者に訴える、あるいは有権者の心を惹きつける提案はまるでなし。自民党総裁は実質的に日本の総理大臣を選ぶ選挙でもある。9人も立候補しているのに政策のほとんどは旧来の枠内にとどまっている。地方の活性化に向けた具体案も乏しい。本社の地方移転に言及するのが関の山。その割に「世界をリードする国へ」(小林氏)、「決着、新時代の扉を開ける」(小泉氏)、「日本列島を、強く豊かに」(高市氏)、「日本の未来を守り抜く」(石破氏)、「国民と向き合う心。世界と渡り合う力」(河野氏)など、タイトルだけは大きい。これも「変わらない、変われない日本」の風景か。
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