今日から10月だ。日本が誇る爽やかな秋はどこにもなく、気象予報士は今日も台風の進路予想に大忙しだ。秋の代わりに日本中に襲ってきたのは値上げラッシュだ。NHKによると「帝国データバンクが国内の主な食品メーカー195社を対象に行った調査によりますと、10月に値上げされる食品は2911品目となり、2800品目余りだった4月を超えて、ことしに入り最も多くなりました」という。第102代目の内閣総理大臣がきょう正式に選出される。いうまでもなく石破茂氏だ。石破氏を標的にするつもりはないが、こんな状況下で減税を口にする政治家はほとんどいない。れいわ新選組の山本太郎氏か、自民党参院議員の青山繁氏ぐらいか。他にもいるかもしれないが表立って声を上げる政治家はほとんどいない。その割に石破氏ではないが「国民に寄り添う」と宣言する政治家のいかに多いことか。日本の政治家ははなから有言不実行なのだ。

帝国データバンクの調査は国内の主な食品メーカー195社を対象に行ったもの。調査対象には食品会社以外は含まれていない。要するに10月から値上げする製品や商品はこれよりはるかに多いということだ。食品に限っても2911品目が値上がりする。今年最大の値上げラッシュだ。インフレはさらに加速するだろう。品目別では、飲料水やお茶などのペットボトル入りの飲料を中心に「酒類・飲料」が1362品目と最も多く、全体の半数近くを占めている。次いでハムやソーセージなどの「加工食品」が673品目、チョコレート関連の商品をはじめとする「菓子」は237品目に上る。いずれも庶民の必需品だ。サラリーマン世帯はまだいい。今年の賃上げ率が平均で5%を超えている。全部カバーできるわけではないが、値上げへの耐久力は少し増している。問題は低所得者層や年金生活者だ。政府はそれなりのインフレ対策を講じてはいるが、対応は常に後追い。インフレ監視期間であるべき日銀は、基調的な物価状況を優先し、庶民や一般国民の生活は眼中にない。

政府が本来やるべき政策はインフレで生活が圧迫されている国民へのサポートだろう。均等に負担の軽減を図るという意味では消費税の税率を下げることが一番手っ取り早い。だがそんな発想は政治家の意識から完全に排除されている。排除しているのは誰か。財務省だろう。石破政権の財務大臣に同省出身の加藤勝信氏が就任する。この人は総裁選の公約で「所得倍増」を主張していた。減税は所得ではないが、家計の消費余力を拡大する効果がある。所得倍増の迂回作戦として是非とも検討してもらいたいものだ。減税によって消費が増えれば企業の生産が刺激され、生産を増やす投資も増えるはず。そうなれば経済全体が活性化する。もちろん需要の増大でインフレがさらに進む懸念もある。だが、売上増で企業の業績が良くなればさらなる賃上げがしやすくなる。これが経済の本当の好循環というやつだ。減税で税収が減ると財務省は懸念するが、実は税率を下げれば税収は増えるのだ。これがデフレ脱却後の経済のあるべき姿だ。それを誰も口にしない。これが日本の貧相は現実だ。