石破新内閣が発足した。ネットで関連ニュースを拾い読みしながら感じた率直な印象をタイトルにした。期待感はある。半面、魑魅魍魎が跋扈する政治の世界である。党内基盤の脆弱さ、側近議員の少なさ。先行きに対する不安も少なからずある。そして総裁選の中で繰り返し発言した解散、総選挙に至るプロセスは明らかな手のひら返しだろう。新内閣発足直後の印象は「逆噴射スタート」だ。これで総選挙は戦えるのだろうか。立憲民主党の野田代表を筆頭に野党の結束が問われる局面でもある。新内閣発足直後である。とりあえず期待感から見ていこう。材料は内閣発足後の記者会見の内容。「まず冒頭、能登半島地震、そして、先般の豪雨で犠牲になられた方、傷つかれた方、そういう皆様方に、心から哀悼の誠を表し、お見舞いを申し上げる次第であります」(官邸H P)とはじまる。その後に政治家としての基本姿勢の説明がくる。

「私が、長い間、政治家として大切にしてまいりましたのは、国民の皆様方の『納得と共感』ということであります」と訴える。思わずその通りと相槌を打つ。そのために「謙虚で、誠実で、温かい政治」を行うと表明する。これは国民との約束でもある。いいじゃないか。その後に新内閣としての基本方針の説明に移る。「基本方針は、『守る』ということであります。5つの『守る』ということを実行いたしてまいります」。5つは①ルールを守る②日本を守る③国民を守る④地方を守る⑤若者・女性の機会を守るーである。②は防衛力の強化、③は経済の活性化、④は地方創生と言い換えてもいいだろう。強化とか活性化と言わず「守る」と表現したところに歴代総理にはない刷新感がある。長い在野暮らしが続いた石破氏。それでもコツコツと政治の本質を見極めようとしてきたその姿勢が、この言葉に表れているような気がした。

個人的には新内閣に対する期待感は多少なりともある。だが、政治改革に関する発言はさらりと触れるにとどまっている。岸田前総理の不出馬表明から新総裁選びまで、焦点は政治改革、党の刷新だったのではないか。新内閣に旧安倍派出身者を1人も起用しなかった事実はある。だが、政治改革に向けた決意は「これを断行してまいる所存であります」の一言しかない。「ルールを守る」の中には公約を守るとの意味も含まれているはずだ。だが総選挙の日程は9日解散、15日公示。持論である論戦の機会はほとんどない。党の意向に逆らえなかったとすれば決断力、実行力に問題ありとみなされる。記者の質問に答えて金融政策では「金融緩和の基本的な基調は維持される」と発言している。「金利のある世界を容認する」発言はなんだったのか。相次ぐ「手のひら返し」は自らの主張に対する逆噴射でもある。