不動産不況に消費不振が重なった中国経済。この先どうなるのか、世界中が注目している。そんな中で香港の代表的な株価指数であるハンセン指数がこのところ急騰に次ぐ急騰を演じている。9月24日に中国の中央銀行である人民銀行が大々的な金融緩和策を発表したためだ。市場の期待を裏切り続けた中央銀行が珍しく投資家にサプライズを与えるような政策を発表した。日本流に言えば異次元緩和だ。投資家はこれで低迷する中国の株式市場が上昇基調に転ずると期待した。期待は期待を呼び込む。かくして雰囲気先行の中国市場が久しぶりに活気づいたというわけだ。結構なことだと思う。だが、ロイターの専門家は「大幅な財政出動が続かないと強いデフレ圧力を食い止めるには不十分」と警告する。まるで公的資金の投入が遅れた「日本の失われた30年」を見るようだ。
中国の金融緩和策は預金準備率の引き下げや住宅ローン金利の引き下げなどが中心。日本流にいえば量的緩和といったところだろう。準備率を50ベーシスポイント引き下げれば、市中に1400億ドル分の資金が供給されるとロイターは試算している。それはそれでいいのだが、中国経済の問題点は不動産に関連する不良債権が何十兆ドル単位で存在していることだ。加えて消費の低迷で企業業績が悪化、大学を卒業しても就職先が見つからない。若者の失業率は20%を大幅に上回っている。本来なら大々的な財政出動が必要なのだが、それができない。だから金融政策で凌ごうというわけだ。アベノミクスは3本の矢だったが、中国は金融の1本だけ。これでは誰が考えても力不足だろう。株価の上昇も一時的。今年のG D P成長率が目標の5%程度を下回れば、株価は再び奈落の底を目指すことになる。
中国は2009年のリーマン・ショックの際に4兆元(約60兆円)の財政出動を実施した。これによって世界に先駆けて景気回復を実現したのだが、この時の対策が今でも中国を苦しめる結果になっている。一つは国営企業を中心とした過剰生産であり、もう一つは地方財政の破綻だ。地方自治体は上昇をはじめた地価をチャンスと捉え、理財商品を大量に販売し住宅投資を積極化させた。冷静に考えればすぐにわかることだが、これは典型的なバブルだ。バブルが崩壊すれば不動産不況が襲ってくる。今はその渦中で打つ手もない状況に苦しんでいる。日本流に言えば公的資金投入の遅れ。まるで日本の過去を見ているようだ。日本では今でも石破新政権が「バブル脱却を目指す」と言っている。これもどうかと思うが、中国はその日本とまったく同じ轍の上を走っている。
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