今回の総選挙で有権者は何を選択しようとしたのか、改めて考えてみた。毎日新聞が29日付けで掲載した「比例代表での各党の得票数」によると、自民党は前回の総選挙(2021年)に比べると533万票減らしている。前回は1991万票獲得した。今回は1458万票。それでも石破総理は退陣を拒否した。国民の手厳しい批判を謙虚に受け止め、国民の期待に答えるべく政治改革に先頭に立って取り組むと表明。改めてこの票数をみて、石破総理の責任の取り方にこれまでの政治家にない異質なものを感じた。自民党の総裁はこれから選挙に負けても責任は取らなくなるのではないか、500万票の重さは“軽い”ということだろう。前回に比べて減少した政党は自民党の他にも4党ある。維新に公明党、共産党、社民党だ。維新もトップの責任論が党内で浮上している。公明党はトップが落選。社民党は票数で8万票強減ったが1人当選した。

48議席増と大幅に議席を増やした立憲民主党はどうか。前回に比べると比例での総得票数は7万票増やしただけ。1.5倍に議席を増やした割に比例区での得票はほぼ横ばい。これは何を意味しているのだろうか。自民党が裏ガネ議員の重複立候補を認めなかったことが要因だろう。敵失に恵まれた議席増ということか。立憲民主党が議席数ほど国民の評価を受けていない実態が垣間見えるような気がする。比例区での得票数を大幅に増やしたのは国民民主党とれいわ新撰組の2党だ。国民は前回に比べ358万票増やした。比例名簿に搭載した候補者は全員当選、あと3名分の当選枠を自民党、維新、立憲民主党に譲るというおまけ付き。玉木代表の「対決より解決」という方針が評価されたのだろう。政党間の重箱の隅を突き合うような感情的対立が主流となっている現在の永田町の中で、一際気を吐いている。

意外と言っては失礼だが、れいわも159万票増やしている。れいわは一貫して消費税の廃止を主張している。国民に寄り添う姿勢が評価されたのだろう。これまで議席のなかった保守党と新たに議席を増やした参政党を含めれば、自公で失った544万票の大半を国民民主、れいわ、保守党、賛成党の4党で奪ったことになる。比例区の得票数の変動からみえてくる有権者の判断は明らかだ。自公連立政権離れが一気に進んだということだ。裏ガネ疑惑をめぐる政治資金規正法の改正で自民党に擦り寄った維新も300万票近く票を減らしている。政治とカネをめぐる疑惑に有権者は、はっきりノーを突きつけたわけだ。それでも総理の座に留まる石破総理。この先、どうやって国民の信頼を獲得するのだろう。総理・総裁就任後の手のひら返しの数々、500万票失っても政権を維持しようとする姿勢、裏がね議員とはまた別の不信感を招きかねない。そんな気がする。