政局混迷のフランス、少数与党のバルニエ政権は2日午後、来年度予算を成立させるため野党の反対を押し切って憲法第49条3項に基づき採決なしで社会保障法案を成立させる強硬措置に踏み切った。これに反発した国民連合(RN)をはじめ野党は内閣不信任案を提出する構え。提出されれば野党の賛成で可決される見込み。電気料金の値上げ撤回に次ぐ譲歩だったが、マクロン大統領の解散戦略の失敗で誕生したバルニエ少数内閣は崩壊する可能性が高い。この先フランスはどうなるのか。ブルームバーグによると「閣僚は留任し、当面の業務を管理する暫定政府として、政府機関の閉鎖を回避するための緊急立法を含む業務を遂行することになる。マクロン大統領がその後、新首相を任命する」とある。新首相の任命も混乱するだろう。野党が結束して新政権を発足させればいいのだが、第1党のRNは極右政党。野党には極左政党の「不屈のフランス」も含まれる。野党政権の樹立も簡単ではない。

この状況はどこかの国に似ていないか。そう日本だ。国会では現在、石破少数政権の所信表明に対する代表質問が行われている。ポイントは所得控除額引き上げ(いわゆる103万円の壁)と政治改革だ。昨日の代表質問に対する石破総理の答弁をニュースでみたが、相変わらず官僚が作成した答弁書の棒読みの印象を受けた。この政局に対する総理自身の肉声はほとんどなかった。おそらくこれが政府・与党の戦術だろう。どこかで譲歩案を提示するだろうが、水面下の交渉を優先して公式的には従来のあやふや答弁に終始する。少数与党になってもその方針は変わらないということだ。フランス政権と認識は一緒だ。全野党が結束して政権奪取に動くことはない。仮に動いても参院は現政権が多数派を占めている。政権を投げ出すような状況ではない。時間をかければ世論の反発は野党に向かうだろう。そう読んでいる気がする。

古今東西政権を維持するというのは、そういうことかもしれない。フランスで問題となったのは社会保障法案の中身だ。与党は社会保障財源の安定化を目指して個人が支払った薬代を国が肩代わりする比率を削減しようとした。これをRNが拒否、バルニエ首相は土壇場で譲歩した上で強硬手段に踏み切った。当初の案を撤回、RNの抱き込みを図った。政府側は譲歩を重ねても展望が開けない。ルペン氏は自信を深め、さらなる譲歩を要求する。だったら強行突破しかない。政府は手順を踏んで強硬措置に踏み切った。これで来年度予算は成立したのだろう。ルペン氏もこの結末を承知していたのではないか。そのうえでさらなる譲歩を求めた。われわれが目にしているのは正当性を主張する双方の駆け引きだ。これが政治なのだろう。日本でもいま同じ駆け引きが繰り返されている。今朝、テレビの情報番組で某エコノミストが、103万円を120万円に引き上げるとの見通しを主張していた。落とし所の雰囲気作りがはじまっている。