ロイターが今朝配信したコラムを読んで久しぶり「なるほど」と腑に落ちた。失われた30年を経て日本経済は「強い日本」と「弱い日本」に分裂したというのだ。「強い」のは証券取引所に株式を公開している大企業だ。「弱い」のは中小企業や消費者。バブル崩壊後の失われた30年を経て、かつて日の出の勢いだった日本経済は、政府によるあまりにもトンチンカンな経済政策によって弱者に転落したのである。もちろんコラムにはそんなことは書いてない。個人的な印象にすぎないのだが、おそらくそんなに間違っていない気がする。弱くなった日本経済に見切りをつけた大企業は、日本を捨て海外に進出した。うちに籠りがちな日本基準に見切りをつけ、国際基準をベースに激烈な競争社会で戦い抜いたのだ。それを証明するのは何か?弱い経済の中で唯一上昇基調をたどっている株価だという。
コラムの筆者はみずほリサーチ&テクノロジーズのエグゼクティブエコノミスト・門間一夫氏だ。日銀理事を経て現職。コラムのタイトルは「円安が暗示する『失われた40年』」。本間氏は日本経済の実態は「失われた30年よりもさらに低い。コロナ禍前、すなわち2019年の実質国内総生産(GDP)を100とすると、本年7─9月のそれは101でほとんど変わっていない。その間の年平均成長率はわずか0.2%である」。これが日本経済の実態であると指摘する。どうしてか、「GDPの過半を占める個人消費は19年の水準をいまだに回復できていない。5年経ってもマイナス圏から抜け出せていないのである。賃金や物価が上がるようになったとは言っても、それを『好循環』と称するのは現実を美化しすぎである」。なるほど。ご指摘のとおり。久しぶりに納得できる解説を読んだ。
そんな中で急騰しているのが株価だ。「国民感覚から離れた世界を写し取るかのように、株価は上昇トレンドをたどる。コロナ禍前の19年、平均株価は年間平均で約2万2000円だった。(それがいま)1.7倍以上となっている」。どうしてだ、誰もが疑問に思う。「株価は代表的な日本企業の価値を表すものであり、中小企業や家計も含めた日本経済の縮図ではない。代表的な企業は過去20年ほど海外展開を強化し、日本経済が成長しなくても利益を実現できる体質に変わった」。大企業の背中を推したのは「スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)やコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の導入」だ。国際基準に沿った資本市場の強化策が企業に改革の“覚悟”を強いたのだ。大企業は“弱い日本”を見捨てて生き残った。そして日本は「二本経済国家」に分裂した。弱い日本が円安を推進し、強い日本が株価を押し上げる。
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