フランスのバルニエ政権に対する不信任決議案が野党の賛成多数で可決、同政権は崩壊した。政権が発足したのは9月、ブルームバーグによる「1958年の第5共和制成立以降で最短」の政権となった。隣国韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾決議案が野党によって提出された。可決の可能性大だ。石破政権はきょう、政権発足後66日目を迎えた。時事通信によると「在職日数は東久邇宮稔彦、羽田孜、石橋湛山各元首相を超え、戦後のワースト3入りは免れた」という。これがニュースになる弱小政権、いつ倒れても不思議はない。米国も大統領が交代する。フランスと並んでEUを牽引するドイツのシュルツ首相の基盤も弱体化している。ウクライナでは大統領選挙が模索されているとの説もある。ゼレンスキー氏を引退させて和平交渉の環境づくりか。真偽は不明。倒れそうにないプーチン政権に比べ、西側陣営の政権基盤は意外に脆弱なのかもしれない。
この脆弱性はなんだろう。逆からみれば野党はどうしてここまで勢力を伸ばしているのだろうか。フランスのバルニエ政権崩壊の過程をみていると、原因はマクロン大統領に対する国民の不信感だという気がする。同大統領は中道右派を結集して大統領に上り詰めた。1期目を終えたあたりから国内経済が不調になり、財政危機突破を目指して社会保障を中心に国民に負担をもとめる政策を追求してきた。日本流に言えば財政健全化だ。これに対して国民連合(RN)を実質的に支配するルペン氏をはじめ野党各党が強く反発、極右とされる国民連合と極左とされる「不屈のフランス」が協力して不信任案を可決するという結末を迎えている。前日マクロン氏は極右RNが左派連合支持に回るのは「考えられない」と楽観視していた。なんという認識の甘さ。背後にある国民の怒りを完全に見落としている。
マクロン氏と言えばフランスのエリート養成機関である国立行政学院(ENA)を卒業している。2018年に起こった黄色いベスト運動によってエリート主義にたいする批判が強まり、同氏自らエリート養成学校の廃止に踏み切った。財政健全化を目指して年金の実質的引き下げに踏み切れば、ただでさえ生活苦に喘いでいる庶民の反発を招くのは目に見えている。それでも社会保障を切り詰めざるを得ないと考えたのだろう。この辺がエリートだ。来年度予算の成立に向けて強行突破を図ろうとした。バルニエ政権は少数政権である。破綻は目に見えている。野党の背後には国民の怒りがある。野党案を丸呑みする以外に政権を維持する方法はない。マクロン氏はエリート校を廃止したが、思考のプロセスはエリートそのまま。66日に目を迎えた石破少数政権、裏で糸引いているのは国民無視のエリート官僚だ。世界中でエリートたちの終焉が近づいている。
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