きのう、きょうのニュースを見て感じるのはE U首脳たちが、慌てて前後策を協議するかのようなドタバタ劇である。先週末に開かれたミュンヘン安全保障会議で米国のバンス副大統領が強烈な欧州批判のスピーチを行った。ロイターやブルームバーグを見ていると、ウクライナ戦争の停戦に向けてサウジアラビアで開催が予定されている米ロの交渉に欧州は招待されていないようだ。ロイターが昨日配信したコラムの中には次の一説があった。「第二次世界大戦終結以来、欧州はロシアと対峙する上で米国の力をずっと頼りにしてきた。しかし今、ロシアのプーチン大統領とともに米国のトランプ大統領も、欧州の『強敵』となって立ちはだかっている。両者の圧力に屈せずにいられるかどうかは、資金と意思、そして政治的な一体性にかかってくる」。トランプ大統領もバンス副大統領もE Uの首脳を排除してウクライナの停戦交渉をはじめようとしている。その一方で米国は欧州の防衛費の引き上げを強く求めている。
フランスのマクロン大統領はきのう、臨時の首脳会議を招集した。議題は防衛費の強化策だ。ブルームバーグによると「マクロン大統領は17日、英国のスターマー首相やドイツのショルツ首相を含む各国首脳をパリに招き、域内の防衛能力強化策について協議した。共同債発行については特に議論されなかったが、ポーランドのトゥスク首相は、3月20、21両日に開催される次回の首脳会議(サミット)までに新たな資金調達策が提示されると述べた」。E Uが防衛費を引き上げるためにはE Uの発足時からの理念である「健全財政主義」を変更する必要がる。これには加盟国の中で賛否両論があって、すぐに結論を出せる状況にはない。だから軍事力を強化のするための財源として共同債の発行というアイデアが取り沙汰されている。トゥスク首相は次回の首脳会議までに結論を出すと言っているのだ。泥縄でも構わない。E Uの健全財政主義を維持しながら、米国の要求する防衛費の強化に取り組むということだろ。
これとは別に今朝気になったのは、ブルームバーグが配信した「欧州派遣軍がロシアの攻撃受ければどうする、米国が詳細要求」とタイトルされたニュースだ。要約すれば「NATOがウクライナに軍隊を派遣し、ロシアから攻撃を受けた時にどうしますか」と聞いているわけだ。これを見て「エッ!」と思った。そんなことも決まってないの。率直な印象だ。バイデン前大統領と共にウクライナを強力に支援してきた欧州だ。最終目標もなかったのだろうか。バイデン氏は何かにつけて、第三次世界大戦は回避すると主張していた。ウクライナを防衛するための攻撃兵器の供与にも二の足を踏んでいた。勝利も和平への展望もないまま、ずるずると防衛戦争を続けてきた。その陰で大量の兵士や一般市民が命を落としている。トランプ氏のある意味無茶苦茶なE U排除に微かな正当性があるとすれば、「ウクライナ防衛の覚悟」を問うていることだろう。だからE U首脳たちは皆ドタバタする。