トランプ関税は今週も世界中を騒乱の渦に巻き込むだろう。この関税に経済合理性はあるか。多くの専門家やメディアは否定的。評価するのは唯一トランプ氏本人と側近だけ。トランプ氏系の経済学者はこの事態をどう見ているのだろうか。ブルームバーグもアンチ・トランプのメディアだ。同社のオピニオンのコラムニストであるデービッド・フィックリング氏は、輸入自動車に対する25%の関税措置に関連して次のように指摘する。「この関税措置が発動すれば、最大の敗者となるのは日本と韓国だろう。両国の自動車は米国に輸入される自動車の3分の1を占めており、北米以外からの輸入車に限れば、その割合は3分の2に達する」と分析する。問題はそれだけではない。電気自動車(E V)の将来を展望した時、「(日本と韓国の企業は)EVバッテリー全体の25%余りを生産し、中国がほぼ独占している市場に唯一対抗し得る存在になっている」と強調する。
自動車産業の将来を支配するのはE Vだろう。世界中の自動車メーカーはいま壮絶な競争を展開している。中でも重要なのはバッテリーだ。トランプ氏が自動車関税を発動して国内のメーカーをどんなに保護しても、米国の自動車メーカーはバッテリーだけは日韓両国の企業に頼らざるを得ない。その両国は自動車関税の影響を最も強く受ける。それだけではない。両国は米国に対してバッテリー工場の新設、増設、改修など巨額の投資を行っている。その両国が対米輸出の縮小に追い込まれれば、投資も必然的に縮小させざるを得なくなる。G Mをはじめ米国の自動車メーカーはどこからバッテリーを調達するのだろうか。結果的に利益を得るのか中国だ。B Y Dなど中国のE Vメーカーはすでに、テスラを上回る収益を上げている。これはほんの一例に過ぎない。保護主義や敵対的な関税の引き上げは、これまでにも世界経済に様々な悪影響を及ぼしてきた。関税によって米国経済が好転する可能性はあるのか、個人的にはまずないとみる。
にもかかわらず、トランプ氏並びにトランプ政権は躊躇することなく関税の導入に邁進している。なぜだろう。関税によって貿易収支が改善し、財政赤字が減るのだろうか。おそらくそうはならないだろう。世界経済が全体として縮小すれば負担は米国の消費者にのしかかるだけだ。トランプ氏もそんなことを理解できないわけはない。ではなぜ?想像するに政治的なパワーの強化につながるのではないか。トランプ氏は昨日、N B Cのインタビューに応じ「頭にきた」と怒りをぶちまけたそうだ。プーチンがウクライナに暫定政権樹立という構想を表明したことに対する反発だ。ウ国に対する軍事支援の代わりにロシア原油への大幅課税並びに、同原油を輸入する国に対する「二次的な関税賦課」にも言及している。ベネズエラに対しても同様の措置の発動を匂わせている。経済合理性がなくても政治的圧力は維持できるとみているのだろう。それでもディールは成り立つのか、難しい気がするのだが・・・。