トランプ大統領は米国時間の2日未明(日本時間3日未明)、相互関税の詳細を発表し、即日効力が発行する。合わせて自動車関税などその他の関税の賦課もはじまる。同氏はこの日を「解放の日」(Bloomberg)と呼んでいるようだ。何から解放されるのだろうか。勝手な推測だが、グローバリズムで海外に移転した米企業の工場を国内に帰還させるという意味だろう。とすれば、米企業の空洞化を招いたグローバル主義から解放される日ということになる。トランプ氏はものづくり大国を復活させ、MAGAを実現しようというわけだ。いまでも米国は世界最大の経済大国だ。いまさらなんで物づくりが必要なのか。素人が素直に感じる疑問だ。Bloombergは「米国が自ら構築してきた戦後のグローバル貿易体制を根本から覆そうとする、より広範なトランプ氏のプロジェクトの一環でもある」と説明する。何のことかさっぱりわからない。
日経新聞ワシントン支局の高見浩輔記者が明確に答えを示してくれる。「トランプ米政権の高官らが高関税を導入する理由に戦争への備えを挙げる場面が目立っている」というのだ。なるほど、そういうことか。ラストベルト出身のJ .Dバンス副大統領に象徴されるような、空洞化で職を失い極貧に喘いだホワイトカラーの復権を目指しているわけではないのだ。近未来に想定される戦争に備えて軍事力の強化を目指している。なるほど、そういうことか。明日の相互関税の発表を控えてトランプ政権の高官たちは、「専門家の多くが経済的な合理性に疑問を投げかけるなか、鉄鋼や自動車など軍事に関わる製造業の強化を反論材料にしている」と解説する。ウクライナ戦争をめぐるトランプ氏の、平和主義者のような発言は単なるパフォーマンスということになる。MAGAの最終的な目標は工業力をともなった軍事大国の復活というわけだ。
WHのレビット報道官は関税をめぐるマーケットの動揺に関連して次のような発言をしている。「大統領には何十年にもわたりこの問題を研究してきた優秀なアドバイザー陣がついている。われわれは米国の黄金時代の復活と、米国を再び製造業の超大国にすることに注力している」と。世界中で多くの専門家や為政者が「失敗する可能性が高い」と懸念する中で、トランプ政権だけは「黄金の時代の復活」を信じて疑わない。果たして信じるものは救われるのだろうか。ブルームバーグは1930年に制定された「スムート・ホーリー関税法」を引き合いに出して、「失敗」の可能性に言及する。Googleはこの法律の影響について「アメリカの輸出が激減して、国内の農業・製造業も打撃を受け、失業率が上昇した」と説明している。トランプ関税が「黄金の時代の復活」につながる可能性は本当にあるのか。いずれ歴史が答えを出す。