Erica YokoyamaKeiko UjikaneChristopher UdemansYasufumi SaitoAdrian LeungPublished:
就任からわずか3カ月余り、高市早苗首相の大きな賭けは実を結んだ。8日に行われた衆院選で、自民党は単独で定数465議席の3分の2を上回る議席を獲得し、歴史的な勝利を収めた。
与党は過半数割れしている参院で否決された法案の再可決が可能となり、国会審議が進めやすくなる。高市首相は、「強い経済」の実現に向けた投資拡大や消費税減税、防衛力の強化などの政策について、国民から明確な支持を得た格好だ。
国民から信任
高市首相は、自身への高い人気を追い風に、選挙前を大幅に上回る議席を自民にもたらし、安定した長期政権への道を開いた。

注釈:増減は1月23日衆議院解散時の議席に基づく

衆院選では、自民が316議席を獲得。結党以来最多だった1986年の中曽根康弘政権下の304議席(追加公認含む)を超えた。NHKなどによると、1政党が単独で3分の2を超える議席を占めるのは戦後初めて。連立のパートナーである日本維新の会は36議席を確保し、与党合計で352議席となった。
衆院の勢力図は選挙前から大きく変わった。1月23日の衆院解散時点で、連立与党は自民会派に加わった無所属議員を含めて過半数ぎりぎりの233議席だった。
今回の自民の獲得議席数は、全17常任委員会で委員長ポストを独占し、各委員会で過半数を確保できる絶対安定多数(261議席)も上回った。
自民の議席増の背景には、中道改革連合の後退がある。立憲民主党と、自民の長年の連立パートナーだった公明党が結成した中道は、選挙前の172議席から、3分の1以下の49議席に落ち込んだ。
市場の変動
今回の大勝を受け、「責任ある積極財政」を掲げる高市首相は、自身の政策課題を実現する上で、政治的な推進力を得た。
高市首相は9日夜の記者会見で、食料品にかかる消費税率を2年間限定でゼロとする減税の実現に意欲を示した。財源については、赤字国債の発行を行わない方針も強調。野党にも参加を呼び掛ける国民会議で議論を進め、夏前に中間取りまとめを行う方針を明らかにした。
財務省の試算によると、軽減税率をゼロ%まで引き下げた場合、消費税収は年間約5兆円減少する。中長期的な財政の健全性への懸念を背景に、債券市場では先月20日、30年物国債利回りが過去最高の3.88%に達した。

高市首相の勝利は、日本銀行が進める金融政策の正常化路線の道筋を不透明にし、円安圧力を長引かせるとの見方も出ている。円は先月、対ドルで18カ月ぶりの安値を付け、インフレ再燃のリスクが高まっている。日銀の利上げ時期が後ずれすれば、生活費の上昇を通じて家計の購買力が低下する状況が長期化する可能性がある。
選挙結果を受けた9日の東京市場では、債券・為替相場は財政拡張懸念が強まった1月のような混乱は見られなかった。ただ、今後過度に円安が進めば、政府による為替介入の可能性も意識され、市場参加者は引き続き市場の不安定化を警戒している。
一方、株式相場は上昇した。与党圧勝で積極財政政策の推進力が増すとの見方から買いが勢いづき、日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は共に史上最高値を更新した。
公明党の支援なしで勝利
四半世紀にわたり自民と連立政権を担ってきた公明が離脱し、立憲と新たに中道を立ち上げたことは、今回の衆院選の構図に大きな変化をもたらした。
創価学会を支持母体とする公明は、1選挙区あたり最大約2万票を動員できるとされる。選挙前には、こうした組織票が中道や他の野党へ流れた場合、最大46の自民議席が危うくなる恐れがあるとみられていた。今回の結果は、そうした懸念が行き過ぎであったことを示した。

自民の新たな連立パートナーである維新の獲得議席も、選挙戦では不確実要因とみられていた。自民と維新は小選挙区で候補者調整を行っておらず、連立による相乗効果は限定的とみられていた。
それでも、維新は地盤とする大阪で一定の強さを維持し、選挙前より2議席多い36議席を獲得した。維新は政策面で自民と親和性が高いとされ、連立政権のアクセル役になる可能性が高い。
得票率の回復
自民は、2024年10月の衆院選で他党に流れた支持層の票を、今回の選挙で取り戻した。自民の得票率は、鳥取県を除く全国46都道府県で上昇し、中でも高市首相の地元の奈良県と中部地方で伸びが顕著だった。
前回の衆院選で得票率が伸びたのは、当時の石破茂首相の地元である鳥取県だけだった。

勢力図の変化
今回の選挙で、一部の小政党は票を大きく伸ばした。これらの政党は積極的にSNSを活用し、争点を絞った政策を訴えることで、無党派の若年層を中心に支持を集めた。
躍進した政党の一つが、衆院で議席のなかったチームみらいだ。エンジニアの安野貴博氏が昨年5月に設立した同党は、目標の5議席を大きく上回る11議席を獲得した。テクノロジー投資や子どもの数に応じた所得税減税を訴える一方、消費税減税を公約に盛り込まなかった唯一の政党として存在感を示した。

神谷宗幣氏率いる参政党も支持を広げ、選挙前の3議席から15議席に伸ばした。同党が強く訴える外国人政策の厳格化は、保守色の強い高市政権の政策対応の一部にすでに反映されている。参政党は昨年7月の参院選でも議席数を1から15に増やした。
一方、玉木雄一郎氏率いる国民民主党の獲得議席は28議席。「手取りを増やす」を重点政策に掲げる同党は昨年、与党と年収の壁引き上げで正式合意するなど国会で存在感を示しつつあったが、選挙前からほぼ横ばいだった。
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