イタリアの総選挙はEU懐疑派が勝利した。上下両院とも懐疑派が多数を占め、民主党を含む左派連合は劣勢。与党・民主党のレンツィ前首相(43)は選挙結果を受けて党首を辞任すると表明した。EUの盟主であるドイツでは半年に渡る連立協議の末、メルケル首相の再任が固まった。同氏はこれを受けて「国際通商政策、中国との競争問題、シリア情勢などの課題への早急な取り組みが必要だ」(ロイター)と述べている。英国の離脱で揺れるEU、メルケル政権が正式に発足することで独仏を軸とした推進体制が固まった途端に今度は、イタリアでEU懐疑派が勝利した。一難去ってまた一難である。
EU情勢を外から眺めながら感心するのは気の遠くなるような駆け引き、それでも諦めない粘り強さ。その上で最終的な結論を導き出すタフな交渉プロセスである。ドイツは昨年の総選挙で連立を組んでいた社会民主党(SPD)が政権離脱を表明、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の連立相手を探す苦難の道が始まった。圧倒的な勝利が予想されていた連立政権だが、難民問題など国内に鬱積する不満は予想を超えており、CDU・CSUはかろうじて勝利を収めたもののSPDが敗北、一旦は連立政権を離脱することが決まった。それから連立相手を模索する協議が半年にわたって延々と続いてきた。
この間、EU離脱を表明している英国の離脱交渉は遅々として進まず、来年3月の離脱時期までに交渉がまとまる見通しすら立っていない。それに加えて今度はイタリアでEU懐疑派の勝利である。時事通信によるとEU懐疑派の「同盟」(旧北部同盟)を含む野党・右派連合と、同じく懐疑派の新興政党「五つ星運動」が早々に勝利宣言、連立政権樹立への意欲を見せている。右派連合にはベルルスコーニー元首相率いるフォルツァ・イタリアも含まれるが、誰が連立の主導権を握るのか現時点では混沌としている。イタリアの場合はEU離脱が大きなテーマにはならないとの見方もあるようだ。いずれにしろEUの苦難は続く。懐疑派の勝利でマクロン大統領のお膝元であるフランスでは極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が再び勢いづくだろう。EUの未来は再び混沌としてきた。