• 金委員長の父親と祖父による過去のよく似た発言を思い起こさせる
  • 譲歩を引き出すために利用し、核兵器を断念することはなかった

トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談の開催に同意した。ごく最近まで続いた侮辱と脅しの応酬という状況を考えれば、あり得ないと思われたシナリオだ。それだけではない。鄭義溶・韓国国家安保室長らによれば、金委員長は訪朝した韓国特使との会談で、核兵器の放棄を検討する用意があることを示唆したという。しかし、金王朝の独裁体制を長年見てきたベテランウオッチャーにとって、金委員長の今回のメッセージは、父親の金正日総書記と祖父の金日成主席による過去のよく似た発言を思い起こさせる。彼らは譲歩を引き出す手段として核協議を利用し、核兵器を実際に断念することは決してなかった。北朝鮮は米国が合意に背いたと主張している。

Q:核協議は行われるのか

A:史上初の米朝首脳会談が、ひょっとすると数週間以内に行われるかもしれない。韓国紙・朝鮮日報が報じたところでは、北朝鮮は大陸間弾道ミサイルの開発停止を約束したが、約束は「米国の態度」次第という。

Q:米国の関与がなぜ重要か

A:米国が北朝鮮に軍事的脅威を及ぼさないという保障がなければ、同国は核プログラムを放棄しようとはしないだろう。米国を主体とする国連軍が韓国側、中国義勇軍が北朝鮮側に立って戦った1950年代の朝鮮戦争は、休戦協定で終結したものの、平和条約は今も締結されていない。韓国には3万人規模の在韓米軍が駐留し、米韓合同軍事演習が定期的に実施されている。

Q:何が米朝対話の障害だったか

A:北朝鮮が核兵器の放棄にコミットする意思を示すことが、米朝対話開始の前提だと歴代の米政権もトランプ政権も主張。対話にそのような条件を付けるべきでないというのが、北朝鮮の最近の立場だ。金委員長は昨年12月の演説で、同国の核抑止力は後戻りできないと述べた。

Q:金委員長が態度を軟化させた理由は何か
A:核プログラムの進展に伴い強い立場から交渉できると考えたのかもしれない。同時に国連安保理や欧米による制裁強化の痛みを感じている可能性もある。生活必需品の輸入に支障が出るほど、北朝鮮の外貨準備が減少していると一部のアナリストは分析する。
Q:首脳会談の焦点は何か

A:外交関係者は長い間、経済支援および安全の保障と引き換えに北朝鮮が外部査察が可能な方法で核プログラムを放棄するという「重要な取引」に言及してきた。協議で実現可能な成果は、せいぜいプログラムの凍結にとどまるだろうと主張する向きもある。

Q:北朝鮮の意図を巡り懐疑的な見方がつきまとうのはなぜか
A:カーター元米大統領が仲介役を果たした1994年米朝枠組み合意は、2002年に高濃縮ウランによる核開発計画が明らかになり崩壊。北朝鮮が最初の核実験を実施した06年の翌年には、6カ国協議を通じて、エネルギー支援などを見返りとする核施設停止で合意したが、こちらも続かなかった。
Q:北朝鮮を核保有国と認めることは選択肢となり得るか
A:それが現在の緊張を緩和する最善の方法だと提言するアナリストもいるが、主要国でそこまで口にする国はまだない。そんなことをすれば、日本と韓国、恐らく台湾も核武装を目指し、核拡散防止条約(NPT)に致命的な打撃を与えかねない。