イタリアの政局が波乱要因になってきた。かつてのギリシャやブリグジットのようにEUを脅かすことになるのだろうか。もう少し様子を見ないとなんとも言えないと思うが、その可能性は強そうだ。マッタレッラ大統領から次期首相に指名されていたフィレンツェ大法学教授のジュセッペ・コンテ氏(53)は27日、首相就任断念を表明した。経済財政相にEU懐疑派を盛り込んだ組閣リストを提出したが、親EU派の大統領に拒否され組閣人事が行き詰まった。そしてマッタレッラ大統領は元国際通貨基金(IMF)財政局長だった親EU派のコッタレッリ氏(63)氏に、総選挙実施までの臨時内閣の組閣を命じた。果たしてこの先イタリアはどうなるのだろうか。

新興政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」(旧北部同盟)は連立政権の首相候補としてコンテ氏を推薦していた。大統領が同氏の組閣名簿に同意しなかったことから、「五つ星運動」と「同盟」という次期政権で連立を目指す政党と大統領との対立は決定的になった。こうなれば再度総選挙をやる以外に道はない。問題は総選挙の時期ということになる。コッタレッリ氏が組閣名簿を提出し大統領の承認を得てすんなり議会の賛成が得られれば、とりあえずイタリアの危機は目先的には回避される。だが、議会で多数を占める「五つ星運動」も「同盟」もこの組閣を承認するとは思えない。となれば、早ければこの秋にも再度総選挙が実施される、とブルーンムバーグは予想している。

それにしてもEUはどうなっていくのだろう。2016年6月の英国民投票、2017年のフランスの大統領選挙、ドイツの総選挙、主な選挙でことごとくポピュリズム政党が躍進した。フランスではかろうじて中道派のマクロン氏が大統領選を勝ち抜いたが、EUの盟主ともいうべきドイツで安定政権とみられていたメルケル氏の基盤が大きく揺らいでしまった。要は厳格な財政規律や移民に対する寛容な政策に多くの有権者が反感を抱いているのである。経済が低迷するイタリアでもこの2つの要因が総選挙の行方を左右した。有権者はEUのエスタブリッシュメントが求める理想や弱者に寄り添う政策よりも、現実の生活に即したポピュリスト政党に投票した。これによって沈静化したかに見えたEU懐疑論に再び火がつきそうになってきた。EUが揺らげば世界が揺らぐ。不安定な状態はまだまだ続きそうな気がする。