米国のソン・キム駐フィリピン大使=2016年9月、東京(AFP=時事)

【ワシントン、ソウル時事】トランプ米政権は27日、米朝首脳会談の実現を目指して代表団を南北軍事境界線がある板門店に派遣し、北朝鮮側と実務協議を開始したと明らかにした。非核化の方式をめぐる意見の隔たりを埋めることができるかが焦点。当初の予定通り首脳会談を6月12日に開催できるかはなお流動的だ。

米メディアによると、米代表団を率いるのはソン・キム駐フィリピン大使。過去に駐韓大使や北朝鮮担当特別代表を務め、北朝鮮問題に精通している。ジョセフ・ユン前北朝鮮担当特別代表が3月に辞任して以降、交渉担当者が不在だったが、経験豊富な外交官を急きょ投入し、実務交渉にようやく本腰を入れた格好だ。

米朝首脳会談をめぐっては、中央情報局(CIA)が水面下で北朝鮮の情報機関と連絡を取り合いお膳立てをしたとされる。ただ、専門家の間では「情報機関のチャンネルですべてできるわけではない」(カーネギー国際平和財団のダグラス・パール副所長)と情報機関主導の交渉を懸念する声が上がっていた。

北朝鮮の崔善姫外務次官=2017年10月、モスクワ

一方、北朝鮮側の代表は崔善姫外務次官とされる。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議などで通訳を担当した女性外交官として早くから知られていた。元米高官らとの非公式接触にもたびたび出席した「米国通」で、キム氏とも顔見知り。ペンス副大統領を「政治的なまぬけ」と非難したことにトランプ大統領が反発し、米朝会談の中止をいったん通告した経緯もある。

実務協議は29日までの予定で、延長される可能性もあるという。米国が短期間で「完全かつ検証可能、不可逆的な非核化(CVID)」を求めているのに対し、北朝鮮は制裁緩和などの「見返り」を得ながら段階的に非核化を行いたい意向。数日の協議で双方が溝を狭められるかは予断を許さない。

また、金正恩朝鮮労働党委員長の秘書室長の役割を果たすキム・チャンソン国務委員会部長が28日、北京空港を経由して、シンガポールに到着。米国のヘイギン大統領次席補佐官らも先遣隊としてシンガポール入りし、29日にも首脳会談の進行や警護など運営面を協議するとみられる。