ちょっと古い話だが、8月27日から28日にかけて英仏の間でホタテをめぐる漁民同士の紛争が勃発した。英BBCによると場所はノルマンディー沖合22キロの地点。「フランスのホタテ漁船員が英国漁船に石や発煙弾を投げつけたり、罵倒を浴びせたりした」と報じた。BBCが英国の公共放送であることに注意が必要だが、同局は紛争の原因を「英国は、ホタテの豊富なこの海域での漁業を法的に認められている。しかしフランス側にはこれが怒りの種となっており、英国が厚かましくもホタテの数を減らしていると非難している」と英国の正当性を印象付けた。その上で、「英国の漁業関係者は政府に保護を求めている一方、フランス側は『貴重な資源』が失われた」と双方の立場を伝えている。
各種メディアの報道を読むと「フランスのテレビ局は、英国の漁船めがけて発煙筒や石が投げつけられる様子を放送した。海上には多数の船がひしめいていた」(CNN)、「数ではフランス漁船が圧倒しており、海洋当局はAFP通信の取材に対し、ノルマンディー沖のホタテの漁場で、フランスの船推定35隻が英国の船5隻を追い払ったと語った」(同)と伝えている。原因は漁業ルールの解釈の違いにあるようだ。争いが起きた海域は有数なホタテの漁場。以前から漁船同士の衝突が絶えなかったようだが、5年前に「イギリス側は大型漁船を入れない代わりに、自由な漁業権を取得していた。対してフランス側は禁漁期間を設けていた」(同)。ところが、今年に入ってフランスの漁民はこの取り決めを拒否したとある。おそらく資源の乱獲でホタテの漁獲量が減ったのだろう。フランスの漁民が怒ってイギリス漁船に対して実力行使に打って出た。これが真相ではないか。個人的な推測である。
日本でもホタテは海産物輸出の主力商品であり、香港経由でアジア各地に日本産のホタテが出回っている。主要な漁場は北海道だが、最近は乱獲のせいかホタテの漁獲高が減少しており、つれて海産物の輸出も頭打ちとなっている。日本産のホタテは沿岸海域で捕獲されており、英仏のような国際紛争にはなっていない。ただ、日本でも資源管理や漁獲規制がこれからの課題で、今回の英仏戦争は持って他山の石とすべきだろ。水産物は本来国境とか国家に関係なく地球の海域を回遊している。日本の法律は海産物を“無主物”といって持ち主のいない動産と規定している。無主物の所有権は捕獲したものにある。だから早い者勝ちが原則。だから漁業には常に漁獲争いの土壌がつきまとう。これを排除するために漁獲調整が必要ということだが、英仏戦争は国際的な漁獲調整の難しさを改めて浮き彫りにしたといっていいだろう。