中国とアフリカ各国の首脳が一堂に会する国際会議が北京で始まり、習近平国家主席はインフラ建設などを進めるため、総額6兆円余りの資金を拠出すると表明し、経済成長が続くアフリカで影響力を拡大していく姿勢を鮮明にしました。

中国・北京では、4日からアフリカの53か国の首脳らが参加する国際会議、「中国アフリカ協力フォーラム」が始まりました。

この中で、習近平国家主席は「中国はアフリカの永遠の友人でいかなる者も団結を壊せない。さらに緊密な運命共同体を築く」と述べて、融資などの名目で今後3年間で総額600億ドル(日本円6兆6000億円余り)を拠出すると表明しました。

中国は、3年前の前回の会議でも同じ額の拠出を表明していて、今後も中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、アフリカで影響力を拡大していく姿勢を鮮明にしました。

そのうえで、習主席は、中国のアフリカへの融資をめぐり一部の国で債務が深刻になっているという懸念が出ている中、重い債務を抱える国などに対して年内に償還期限を迎える無利子の債務について返済を免除する考えを示し、こうした懸念にも配慮したものとみられます。

また、「いかなる者も想像や臆測で中国とアフリカの協力の成果を否定することはできない」と述べて、中国のアフリカへの関与に厳しい視線を向ける欧米諸国をけん制しました。

一方、会議の共同議長を務める南アフリカのラマポーザ大統領は、中国の巨額の資金の拠出を歓迎すると表明したうえで、「中国から技術やノウハウの移転を進め、アフリカでの産業化を進めていかなければならない」と述べて、中国の進出が一方的なものにならないよう中国側に注文をつけました。

個別会談で関係強化

今回の会議に合わせて、中国の習近平国家主席は、参加国の首脳と個別の会談も積極的に行っていて、2日までに、アフリカの30か国の首脳と会談しました。

中国外務省によりますと、各国の首脳との会談で習主席は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に基づいてインフラ建設を拡大することや、農業などの幅広い分野で経済協力を進める考えを示したということです。

中国は、経済成長と人口増加が続くアフリカを有望な市場と位置づけているほか、国際社会の世論を味方につけるうえでも50を超えるアフリカ諸国との関係強化を重視していて、習主席みずからが積極的に2国間外交を進めることで影響力を拡大する狙いがあるとみられます。

台湾断交の国を歓迎

習近平国家主席は、演説の冒頭で「新たにガンビアとサントメ・プリンシペ、それにブルキナファソがメンバーに加わった。きょうはそれぞれ代表団を率いて出席しているので熱烈な拍手で迎えよう」と述べて、前回の会議からの3年間に台湾と断交して中国と外交関係を結んだ3か国を拍手で迎える演出を行いました。

さらに演説の中で、重い債務を抱える国などに対して年内に償還期限を迎える無利子の債務について返済を免除する考えを示しましたが、対象の国について、「中国と外交関係がある国」とわざわざ強調しました。

アフリカでは、エスワティニ(旧国名:スワジランド)の1か国のみが台湾と外交関係を結んでいますが、中国は経済協力などを通じて台湾と外交関係のある国々の切り崩しを図る姿勢を鮮明にしています。

今回の会議でも、台湾と断交した国を手厚くもてなすことを強調して、「1つの中国」という考え方を受け入れていないとして批判している台湾の蔡英文政権をけん制するとともに、台湾と外交関係にある国々に対し、中国と外交関係を結ぶよう促す狙いがあると見られます。

南アフリカ大統領 中国進出に注文も

会議の共同議長を務める南アフリカのラマポーザ大統領は、中国の習近平国家主席が表明した巨額の資金の拠出を歓迎すると表明したうえで、中国との協力関係はアフリカの開発目標を実現するためであり、「一部で言われているような、アフリカで新しい植民地主義が起きているわけではない」と述べました。

その一方で、中国がアフリカにとって最大の貿易相手国になっているものの、アフリカが天然資源などを輸出し、中国から工業製品を輸入している現状を指摘し、「貿易関係をバランスの取れたものに変えていく必要がある」と強調しました。

そして、そのためには「中国から技術やノウハウの移転を進め、アフリカでの産業化を進めていかなければならない」と述べて、中国の進出が一方的なものにならないよう中国側に注文をつけました。