【北京=藤本欣也】中国の習近平国家主席が現代版シルクロード経済圏構想として「一帯一路」を提唱してから7日で5年となる。一帯一路は中国主導で国際秩序作りを進める道でもあるが、最近、沿線の国々で対中債務拡大により中国支配が強まることへの懸念が高まっている。中国国内でも援助のばらまき批判が表面化するなど、一帯一路は曲がり角を迎えつつある。

習氏は2013年9月7日、中国から中央アジア、中東、欧州へ至る「シルクロード経済ベルト(一帯)」の共同建設構想を発表。翌月には、中国から南シナ海、インド洋を経てアフリカ、欧州へ至る「21世紀の海上シルクロード(一路)」の共同建設を打ち出した。以後、統合され一帯一路構想と呼ばれている。

主な柱は、沿線の国々で鉄道や道路、港湾といったインフラ建設などを中国主導で推進することだ。最近は“脱シルクロード化”が進み、オセアニアや中南米諸国などにも対象地域を拡大している。

習氏は8月下旬に北京で行われた一帯一路の5周年記念会合で、「一帯一路は経済協力だけではない。世界の発展モデルや統治システムを改善する重要なルートだ」と明言、新たな国際秩序作りにも意欲を示す。

しかしマレーシアでは、マハティール首相が対中債務の増大を危惧し中国主導の大型投資案件の中止を表明。インドなどでも中国主導の国際秩序作りへの警戒論が高まっている。一方の中国は「一帯一路は政治・軍事同盟でもなければ『中国クラブ』でもない」(習氏)と強調、国際社会の懸念の打ち消しに懸命だ。

ただ、米国との貿易摩擦が激化し中国経済に影響が出始める中、中国国内でも対外援助拡大を疑問視する声が表面化しつつある。

習氏の母校、清華大の許章潤教授は7月、「無原則にアジアやアフリカを支援していけば中国国民の生活を締め付けることになる」と直言。山東大の孫文広・元教授も8月、「中国国内にも貧しい国民が多いのに外国に金をばらまく必要があるのか」などと批判し、当局に一時拘束された。