国連総会開催中のニューヨークが忙しそうだ。23日にニューヨーク入りした安倍首相は早速トランプタワーで大統領と会談。貿易問題や北朝鮮問題を巡って意見交換した。今日に予定されていた茂木経済再生相とライトハイザー通商代表部代表との交渉は25日に延期されたが、26日には再び安倍・トランプ会談が予定されている。日本車に25%の追加関税を課すと恫喝する大統領に安倍首相がどう対抗するのか、日本としては最大の関心事ということになる。一説によると日本側は二国間交渉を受け入れ、交渉中の追加関税発動を避けるというのが基本戦略とされるが、果たしてそれをトランプ大統領が受け入れるかどうか?どう考えても中間選挙を目前にしたトランプ大統領側に主導権があるような気がする。

 

トランプ大統領の弱みは対中強硬策を推進していることで、支持層である農業関係者が経済的に損失を被り始めていることだ。ここに付け込んで安倍首相が農産物の輸入拡大を約束すれば、目先の自動車関税はなしで済ますことができるかもしれない。だが、そんなことをすれば来年に予定されている参議院選挙で自民党は敗北するだろう。それも難しい。となれば2国間FTA交渉を受け入れ、通商交渉の長期化を図るしか手はないようにみえる。その際、自動車関税と切り離すことができるかどうか、保障はない。トランプ大統領は「交渉が決裂すれば大変なことになると日本は承知している」と自信を示している。自民党総裁選で三選を決めた安倍首相は早くも正念場を迎えたことになる。トランプ大統領との信頼関係を生かせなければ、安倍首相自身が信頼を失うことになる。

 

トランプ大統領も大変だ。最高裁判事に指名したブレット・キャバノー高裁判事(53)の不祥事がまた発覚した。依然として同判事を擁護しているものの、指名獲得のプロセスはかなり不透明になっている。自身の問題も再燃している。ニューヨークタイムズが先週、司法省のローゼンスタイン副長官が「トランプ大統領との会話を極秘に録音することを昨年、司法省の同僚に提案した」と報じた。これを受けてローゼンスタイン氏がケリー米大統領首席補佐官に口頭で辞意を表明したと伝えられている。27日に同氏はトランプ大統領と会談する予定になっており、辞任は避けられないのだろう。ただ、この問題はトランプ氏を利する可能性もある。問題は同副長官がモラー特別検察官の任命権者ということだ。同氏が辞任すればトランプ大統領は自分に有利な人物を後任に当てるだろう。副長官辞任はロシア疑惑にも関係してくる。金正恩北朝鮮委員長との再会談を調整しながら、内政にまた一つ難問を抱えたことになる。各国首脳の会談も相次ぐ。今週のNYから目が離せない。