ニューヨーク・ダウが昨日急落した。下げ幅は831億ドルで史上3番目の下げ幅となった。原因は金利の上昇やドル安、米中の貿易摩擦などメディアによってマチマチ。ロイターによるとトランプ大統領も担当者からこの急落に関する説明を受けたという。同大統領の反応は定かではないが、CNBCが政府高官の話として報じたところによると、「(この日の下げは)強気相場の調整。おそらく健全なもので、過ぎ去るだろう。米経済は依然として力強い」と述べたという。トランプ政権としてもこの急落の影響を最小限に抑えたいのだろう。メディアに情報を流してそれとなく事態の沈静化を図っている。株価は急落したもののドルは後半に戻しており、下落幅の大きさに比べると事態はさほど深刻ではないのかもしれない。

ど素人が日々の相場の動きをあれこれ言っても何の役にも立たないことは百も承知している。それでも史上3番目という急落から何かを読み取るとすれば、それは投資家の間に蔓延している「不安」の大きさということになる。トランプ政権のもとで株価は上昇基調を強めてきたのだが、肝心のトランプ氏の政策には不安材料が多い。その最たるものは米中の貿易摩擦ということになる。ロイターによると米司法省はきのう、「米国の航空宇宙企業数社から企業秘密を盗んだ疑いで中国国家安全省のスパイが逮捕されたと明らかにした」と報じた。この情報が米中貿易摩擦の激化としてマーケットに伝わったようで、ダウの下落を加速した。長期金利が上昇したことも株価の急落に繋がったようだが、これもきのう、きょうの話ではない。このところずっと米国の長期金利は上昇している。

これといった決め手のない急落、それがまた急落に拍車をかける。投資家はいったん不安になると、あることないこと、すべてが不安になる。その集積が831ドルという形になって現れたのだろう。投資家の不安心理が史上3番目の規模に膨らんだということだ。米国の対極にある中国はどうか。昨日某テレビ局で中国専門家が国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉総裁を中国政府が拘束したことについて、「政敵を恐れる習近平主席の不安心理の表れでないか」と解説していた。米国は投資家が不安を感じ、中国では汚職撲滅に名を借りて政敵を一掃している主席が、政敵グループの反撃に不安を感じている。世界の政治を動かす原動力はいずこも“不安心理”なのかもしれない。世界中に不安心理が充満している。個人的には近い将来政治も経済も、何かもっと大きな出来事が起こりそうな不安を感じている。