サウジアラビアによる反体制ジャーナリストの殺害疑惑が一段とサウジを追いつめている。20日に発表したサウジの説明に国際社会は納得せず、さらなる詳しい説明を要求している。サウジに対する世界的な不信の高まりを受けてトランプ大統領も右へ左へと大揺れに揺れている。中間選挙を前に世論の動向を気にしているのだろう。今朝のニュースによると同大統領は、ロシアとの間で結んでいるINF(中距離核ミサイル全廃条約)を破棄する考えを明らかにした。それだけではない、中間層を対象とした所得減税案を中間選挙の前に発表するといった見通し記事や、トランスジェンダーを認めないように性の定義を変更する可能性さえ示唆している。いずれも中間選挙目当ての選挙対策だろう。露骨だし度が過ぎている。

だが、民主主義が選挙によって成り立っている以上、これも一つの現実だろう。現実を一方的に拒否するのは簡単だが、現実を直視して物事の是非や可否、理非曲直を判断しようとすると、結論を出すのは途端に難しくなる。サウジの反体制記者抹殺事件はあってはならないことであり、ことの理非曲直を考えるまでもない絶対的な悪だ。だが、この事件を受けてトランプ大統領が“揺れている”という現実には一理があるような気がする。大統領の関心は中間選挙を控えてどちらが有利かということだろうが、そんな単純なことではない。中東情勢をズームアウトしてみれば、歴代大統領の悩みが浮かび上がってくる。ロイターが18日に配信したコラム「サウジ問題で表面化する『米国凋落』」を読むと、一筋縄ではないかない中東情勢の混迷の一端が見えてくる。この記事を書いた記者によると「同盟国、敵対国を問わず、この地域の拷問部屋や監獄で恐ろしいことが行われてきたことは疑う余地がない」。

我々には想像もできないがこの地域では、権力による殺人など日常茶飯事なのかもしれない。そんな状況下で「アラブの春」が始まる。「2011年にシリアで抗議活動が活発化したとき、オバマ政権はどうすれば米国の力を最善の方法で発揮できるかに苦しんだ」。そして、「十分な支援を提供することなく、反政府勢力を応援したのだ」。その結果、「現在では、戦場でほぼ勝利を収めたロシアとアサド政権が明らかに主導権を握っている」と。オバマ大統領の弱腰がシリアの混迷と中東の混乱を招いた。トランプ政権はサウジを擁護しようとしている。だが単純に「擁護」すれば世論の反発を招く。制裁など「強行措置」を発動すればイランやイラク、イエメンなど戦闘地域で一段とロシアを優位に立たせることになる。その後ろには中国もある。突然降ってわいたようなINF破棄はそんな中で登場した“ブラフ”かもしれない。問題は、米国のブラフが通用しなくなりつつあることだ。さて、日本は、ソフトバンクはどうする・・・。