ドイツのメルケル首相が13日、欧州議会で「欧州軍」の創設を呼びかける演説を行った。欧州軍についてはフランスのマクロン大統領が最初に提唱、これに対してトランプ米大統領が猛烈に反発していた。マクロン・フランス大統領とトランプ米大統領の対立は、メルケル氏の演説によってEU対米国の対立に発展するだろう。マクロンーメルケル構想が陽の目を見るかどうかわからないが、トランプ氏が大統領として存在している間はこの問題がいたるところで蒸し返されることになる。トランプ大統領の「一国主義」か、マクロンーメルケル連合の「多国間主義」か、国際政治はとうとう来るべきところまで来た。歴史の流れは多国間主義だ。トランプ大統領はこの流れを止められないだろう。

トランプ氏とマクロン氏は11日にパリで開かれた第1次世界大戦終結100周年の記念セレモニーに出席、その機会に首脳会談を開いている。この場で両首脳は今後の連携を確認しあったばかり。そのわずか2日後にはツイッターで「マクロン大統領の支持率は極めて低い」と首脳会談の相手方を揶揄している。トランプ流といえばトランプ流だが、首脳間の信頼を第一とする外交節度という面から見ると非難されて当然の振る舞いである。NHKによるとトランプ氏は「マクロン氏はアメリカ、中国、ロシアからヨーロッパを守るため、独自の軍をつくるという提案をしている。しかし、第1次、第2次世界大戦で敵となったのはドイツだ」と投稿し、マクロン大統領が打ち出したEU軍創設に強烈な不快感を示した。

ブルームバーグは「(トランプ氏が)両大戦でフランスがドイツの侵略から救って欲しいと求めた相手は米国だったと示唆した」と解説。ついでに「マクロン氏の上級顧問は、トランプ氏が多少なりとも歴史を勉強することに時間を費やしたのは喜ばしいことだと発言した」と続けた。さらに、ベルギーのフェルホフスタット元首相のツイッターを引用、「フランスからの資金援助がなければ、米国という国は存在すらしていないことをトランプ氏は分かっていないようだ、と歴史を講義した」と書き足した。トランプ氏との揶揄の応酬といったところだが、欧州軍創設となれば親密だった米欧関係にヒビが入ることは確実。これはトランプ氏が掲げる一国主義の限界でもある。同じ日に、英国とEUの離脱交渉が事務レベルで合意された。多国間主義はどこまで一国主義と共存できるだろうか。