外国人労働者の受け入れ拡大を目指す出入国管理法改正案が27日、衆議院の法務委員会と本会議で採決され、可決成立した。一夜明けたきょう、新聞・レレビなどマスメディアは政府・与党が熟議を放棄し法案を強行採決したと一斉に批判している。一斉というのは少し言い過ぎかもしれない。すべてのメディアをチェックしたわけではないから、中には事態を冷静に分析したものがあるかもしれない。言いたいのは主だったディアの主張は軒並み政府・与党の強引な国会運営に対する“お決まり”の批判である。メディアの正当性を確保するための批判、要するに批判する“ふり”をしているような気がして仕方がないのだ。「熟議せよ」、重要法案が採決されるたびに繰り返されるこのフレーズに最近は、なんとなくうんざりするのである。

個人的には外国人労働者の拡大に向けた与野党の議論は噛み合っていなかったと思ったし、現状の改善に向けた国会の役割に多くを期待できないことを改めて痛感した。出入国管理法改正案を重要法案として扱うことで与野党が合意、これを「重要広範議案」と呼ぶのだそうだ。重要広範議案になると審議時間は最低でも20時間を確保するとの合意が与野党間にあるようだ。それが今回はたった17時間余だったという。この点を捉えて野党は「拙速」「審議不足」「強引な国会運営」と批判する。それはその通りだろう。だが、審議入りに当たって野党は様々な条件をつけて遅延行為を行っている。すんなり審議に入れば20時間は確保できたかもしれない。国会運営の一つ一つが政権をめぐる与野党の攻防戦である以上、審議時間をめぐるつまらない駆け引きも、政党の重要な戦術なのだろう。その意味では与野党とも懸命にこの攻防戦を戦い抜いたことになる。

問題はメディアだ。国会は政権をめぐる与野党の攻防の場に過ぎない。人手不足で困っている地方の実態や、技能実習生など外国人労働者にまつわる様々な問題を解決する場ではなくなっている。そこが問題なのだ。審議時間や熟議そのものが与野党の政争の具なのである。そんなことを百も承知なのにメディアは、熟議が足りないと政府・与党を批判する。例えば朝日新聞。今朝の社説で「安保法制、共謀罪法、カジノ法など、熟議を拒み異論を数の力で抑え込む国会運営を、現政権は重ねてきた。今回はその姿勢をさらに強め、話し合いをしようという『ふり』さえ、早い段階でかなぐり捨ててしまった。暴挙に強く抗議する」と書いている。なんと浅はかなのだろう。戦場の最前線に飛び込んで倫理を説くようなものだ。書くなら与野党を含めて国会のあり方そのものを批判すべきだ。