[4日 ロイター] – 米国株式市場は急反落し、主要指数が3%超下落して取引を終えた。米国債利回りの動向を受けて景気への懸念が広がったほか、貿易摩擦を巡る不安も再燃し、金融株や工業株を中心に売られた。市場関係者のコメントは以下の通り。

●米中関係は単なる休戦、景気後退疑う見方も
<レイモンド・ジェームズ(フロリダ州)の首席エコノミスト、スコット・ブラウン氏>(今回の米中首脳会談の結果について)多くの人は合意というより休戦と見ていて、単なる休戦のほかに何で合意したのかがあまりはっきりしない。長短利回りの逆転について、米連邦準備理事会(FRB)が行き過ぎた政策を採ったのか、この先景気が後退するのかと人々が疑っている状況だ。今年は良好な形で成長したが、ある時点で鈍化し、より持続可能なペースとなるだろう。

●ブレグジット、FRB発言、関税が重し

<ドイツ銀行ウェルス・マネジメントの首席株式トレーダー、デロレス・ルービン氏>直近の大きな値動きは、その大部分がブレグジット(英国の欧州連合離脱)への反応だ。今日の売りは、関税に関する一連の発言を見て、問題が何も解決されていないことや、なお取り組むべき作業があり、前日に感じた高揚感が実体のあるものではなく大見出しのようなものだったと気付いたことが背景だ。前週の米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言の影響も続いている。多くの人はパウエル議長のコメントが利上げ鈍化を示唆したと受け止めている。今日はニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が発言したが、来年のFRB政策について読み違いがあるのかもしれない。ブレグジット、FRBの発言に加え、関税を巡る懸念も再浮上してきた。

●弱気地合いでリスク回避
<インフォーマ・ファイナンシャル・インテリジェンス(ネバダ州)の市場ストラテジスト、ライアン・ノーマン氏>現時点で弱気の地合いだ。投資家が(米中)協議に関する情報を消化した途端、不透明感や情報不足に関心が向かう。(利回り曲線を巡る)現在の状況は、投資家が対応する必要のあるさらなるマイナス材料だ。リスク回避の展開で、貿易動向に敏感とされる銘柄が先に売られている。利回り曲線の平坦化に伴い金融株が売られている。平坦化で銀行の収益力に大きな影響が及ぶからだ。現時点では、よりディフェンシブな相場展開となっている。

●FOMC前に2・10年債利回り逆転なら来年の利上げペース鈍化
<ナティクシス(ニューヨーク)の米州担当首席エコノミスト、ジョセフ・ラボーニャ氏>まず成長が鈍化している可能性がある。欧州と日本発の指標が軟調だったことで、過去6─8週間はこれが市場のテーマだった。次に、米連邦準備理事会(FRB)は金利を中立金利と考えられる水準を超えて引き上げる可能性がある。この日のニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言は、前週のパウエルFRB議長の発言をリセットするようなものだった。一部で考えられているほどFRBはハト派化しない可能性がある。
こうしたFRBの事情に加え、経済が2019年は軟化するとの懸念が出ていることが、この日の相場に大きな重しとなったと考えられる。翌日は(ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の死去を受けた「国民追悼の日」のため)市場は休場となり、売りを出すなら1日待つのは避けようとの心理も働いたのだろう。長期的な視点で見れば、利回り曲線は逆転せざるを得ない。逆転は大方の予想よりも早い時期に起こるだろう。今から今月18日までの間に2年債利回りが10年債利回りを上回れば、FRBは来年の利上げを縮小せざるを得ないだろう。

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