けさニュースを見ていてやっぱりと思ったのは「政府、IWC(国際捕鯨委員会)からの脱退方針固める 商業捕鯨再開に向け」(朝日新聞)というニュース。世界中のクジラの管理はこの委員会の了解を得て実施されている。元々クジラの合理的管理を目的として発足した委員会だが、だいぶ前から捕鯨国と非捕鯨国の対立が激化、商業捕鯨の再開は絶望的になっている。IWC加盟国は現在89カ国だが、このうちの過半数が非捕鯨国によって占められている。2年に一回開かれる総会で毎年商業捕鯨の再開案が議論されるが、ことごとく否決されてきた。政府の方針は捕鯨国である日本が高い拠出金を払って同委員会に加盟している意味がなくなったことを示している。捕鯨に関わっている人たちの気持ちはよくわかるが、だからIWC脱退という単純な選択でいいのだろうかという気もする。

今年の9月ブラジルでIWCの総会が開かれた。議長国の日本はこの総会に議決方式の見直し、商業捕鯨の解禁は専門委員会で議論することなどを盛り込んだ総会改革案を提出した。総会の主要メンバーである日本の提案はそれなりに意味があり、過半数の賛成を得られると見られていた。だが、結果は関係者の淡い期待をよそにすべて否決された。IWC脱退は関係者の間でだいぶ変えから検討されていた。その脱退について真剣に検討を始めたのがこの9月の総会からである。どんなに頑張っても商業捕鯨の再開は難しい。となればIWCを脱退して商業捕鯨を再開する以外に残された道はない。それはそれで政府なりに筋の通ったやり方だと思う。とはいえ、IWC脱退には賛否両論がある。政府の求める捕鯨国・日本の筋論と国際化という現実の間には大きな溝があるような気もする。

IWCを脱退すれば確かに商業捕鯨は再開できる。しかし、捕鯨が認められるのはIWC並びに国際海洋条約の規制が及ばないEEZ内の海域にとどまる。クジラは国境を意識して泳いでいるわけではない。多くのクジラが回遊する公海上では商業捕鯨は言うに及ばず調査捕鯨もできなくなる。それ以上に、良くも悪くもいま世界は国境を超えた連携によって成り立っている。日本が日本だけの事情でIWCを脱退することに、捕鯨に関与していない多くの国民の理解が得られるだろうか。鯨肉を食べるという食文化もすでにほとんどない。捕鯨大国としての過去の栄光にいつまでもしがみつくことが国策として果たして得策なのだろうか。昔から捕鯨で生計を立ててきた一部のローカルな漁場では今も特例として捕鯨は認められている。個人的にはIWCにとどまり、調査捕鯨を続けながら気長に潮目の変化を待つ方がいいような気がするのだが、果たしてどうか…。