韓国の駆逐艦が自衛隊の哨戒機にレーザーを照射した事件が、日韓の溝を一段と深くしそうな気配だ。韓国はレーザー照射したこと自体を認めていない。個人的には軍事技術や光学兵器に関する知識はまったくないが、メディアによる情報を見ている限り、明らかに韓国の言い分に無理がある。それでも事実を認めようとしない韓国側には何らかの“お家の事情”があるのではないか。文在寅(ムンジェイン)大統領は米国よりも北朝鮮に寄り添う姿勢を強めている。これに対する不満が仮に韓国軍の内部に鬱積しているとすれば、常軌を逸した今回の出来事も不満分子による仕業と考えられないこともない。だが、メディアの情報にはそんな指摘はどこにもない。となれば、韓国の主張はほとんど理解不能だ。おそらく多くの日本人がそう考えているのではないか。

産経新聞は正論で岩屋防衛大臣が韓国の対応に遺憾の意を示しながらも、未来志向で対話を続けると表明したことを批判している。慰安婦問題に徴用工問題、竹島問題などこのところ韓国の対日批判は激しくなる一方だ。こうした中でメディアは何をどう伝えているか。正論は「裂帛(れっぱく)の気合とともに怒りを伝えるべきではないか」と問う。日経新聞は社説で「韓国政府には経緯について日本の国民が納得できる詳細な説明を求める」と極めて常識的な主張に止めている。これが今の主要メディアの代表的な対応だろう。いつの場合もそうだがメディアは、結果が判明してから断定的な論評に転ずる。「裂帛の気合」と感情論に感情論で対応する産経新聞は、日本のメディアの中では良くも悪くも特異な存在だ。朝日新聞は「安全保障の観点から日韓関係は非常に大事だ。不一致の点があるので協議したい」とする防衛大臣の発言を後押しする記事を特派員電に仕立ている。どいうわけかこの件に関する社説はない。

個人的な過去を振り返れば小学生の時に韓国籍の在日人がいた。放課後みんなで彼をからかったことがある。いまで言えばイジメだ。頭の奥深くに残る個人史の汚点だ。一時的とはいえ日本に支配された辛い経験を持っている南北朝鮮の人々からみれば、日本に対する憎しみを忘れることはできないだろう。日韓関係を考える上ではどうしても“感情”が入り込むのは致し方ない。こうした中でJーCASTニュースは昨日、ソウル新聞のニュースサイトの記事を引用しながらこの件を詳しく報道している。同新聞は「韓国が国際社会の責任ある一員であれば、ミスを認めて謝罪することも必要だ」との見解を示している。韓国メディアは意外に冷静に事態を見つめているようだ。日韓両政府はお互いの感情に配慮しながら公式、非公式を問わず、まず“事実関係”を共有すべきではないか。