安倍晋三首相は4日、来日中のドイツのメルケル首相と首相官邸で会談し、情報保護協定を締結することで大筋合意した。秘密情報を交換した際の情報漏えいを互いに防ぐ枠組み。中国の台頭などを見据え、安全保障分野での協力を深化させる狙いがある。米中両国の貿易摩擦を念頭に、自由貿易体制の維持を図る方針でも一致した。

 メルケル氏の訪日は5回目で、約45分間会談した。会談後の共同記者会見で、首相は中国の海洋進出を念頭に「力による一方的な現状変更の試みに反対し、法の支配に基づく国際秩序の維持のため連携する」と表明。メルケル氏も、日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想を支持する考えを示しつつ、中国の経済圏構想「一帯一路」を念頭に、「中国の領土的野心とも関係している。もちろん中国とは協力せねばならないが、そう簡単に進めてもらっては困るところもある」とけん制した。

 日独両国は第二次世界大戦でイタリアを含めて3国同盟を形成した。こうした経緯から、両国は戦後は経済的協力を進める一方、安全保障分野での協力は控えてきた。しかし、北朝鮮問題や中国の海洋進出などを受け「東アジア情勢にドイツも関心を持たざるをえない状況」(政府関係者)となり、安全保障協力に一歩踏み出した。

 また、両首脳は今月1日に日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効したことを踏まえ、経済協力強化も確認。6月に大阪市で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に向け、両首脳は「自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界経済の成長のけん引」などの方針でも一致した。

 英国のEU離脱問題では、「合意なき離脱」は回避すべきだとの認識を共有。北朝鮮問題では、非核化の具体的措置が取られるまで国連安全保障理事会決議に基づく制裁を維持し、拉致問題の早期解決に向け協力する方針を確認した。【光田宗義、野間口陽】