長谷川町子の人気漫画「サザエさん」のお父さんは波平さん。この漫画がスタートしたのは1946年(昭和21年)である。この時の波平さんの年齢は54歳。終戦直後の当時の情勢を勘案すれば大変なお爺ちゃんだ。年の割には元気で肉体的にも精神的にも磯野家を支えている。波平さんは漫画スタート以来ずっと54歳のまま。その波平さんの生物学年齢は、現在に焼き直せば後期高齢者直前の74歳に相当するという。裏を返せば現在の実年齢が74歳の高齢者の生物学的年齢は54歳ということになる。54歳といえば働き盛りである。ところが日本の制度や政策は昔の波平さんの実年齢に紐づけられている。こうした制度を修正すれば少子高齢化に伴う社会保障費の急増はあっという間になくなる。と主張するのは日銀の関根調査統計局長だ。
本日付けでロイターが配信した「『波平さん』理論で高齢化問題は雲散霧消」と題された記事に詳しい。食生活や医療技術、生活環境等の改善によって日本人の寿命は終戦直後に比べると大幅に伸びている。伸びているのは寿命だけではない。平均的な歩く速度は「10年前の5歳若い年齢層と一緒」で、「16年の75-79歳の平均的な歯の数は11年前の10歳若い年齢層と同じ」という研究もあるそうだ。要するに日本人は肉体的に若返っているのだ。にもかかわらず日本の制度・政策は、生物的な肉体年齢の若返りを考慮していない。生産年齢人口は統計的には相変わらず「15歳〜64歳」に限定されている。年金の受給開始年齢も徐々に引き上げられつつあるが、こちらも基本は60歳である。制度や政策は全く成長していない。
関根さんは「年金支給開始や退職の年齢など、実年齢にひも付けているさまざまな制度は『現実に起きている変化に適応していない可能性もある』と指摘する。退職年齢を実年齢ではなく、生物学年齢に応じて設定すれば「社会保障制度の持続可能性の問題は雲散霧消する」と語る。日本の政治は生物学的年齢を無視している。日本人はいろいろな意味で成長しているのに、働き盛りの波平さんに福祉と称して些少な年金を恩着せがましく支給しているようなものだ。おかげで若い人たちの負担が飛躍的に増加している反面、働き盛りの老人の年金は雀の涙。どこもかしこもおかしくなっている。統一地方選挙の前半戦、11都府県の首長選挙の投票率は50%を大きく下回っている。過半数に満たない民主主義。それでも民意に基づいていると政治家は主張する。形式や美辞麗句はどうでもいい。現実に戻ろう。
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