トランプ政権は中国の通信機器大手ファーウェイに対する取引停止措置の一部を緩和した。既存顧客は90日間に限り取引の継続が認められる。この間にファーウェイの代替機器導入などの措置を実施するよう求めている。ファーウェイ問題は米中貿易摩擦と並行して動いてきた。ブルーンバーグによると同社排除は貿易協議の行き詰まりを受けて実施に移されたとされている。トランプ政権はなぜこれまでファーウェイを忌み嫌うのか。これまでのメディアの報道によれば、通信機器の内部に米国の機密情報を盗み取るブラックボックスが仕組まれており、国家の安全保障に重大な危機を及ぼす可能性がある。要するに国家の安全に関わっていると理由づけされている。同社の孟副社長はイランとの不正取引に絡んでいたとして逮捕された。
一連のニュースも見ながらふと思い出して、2日前に配信された同社の任正非CEOのインタビュー記事を読み直した。このインタビューは日本の一部メディアを対象に行われたものだが、BUSINESS INSIDER JAPANは全文を配信している。その中で任氏は次のように言っている。「ファーウェイは法律を違反してない、アメリカからは証拠が一つも出てこない」と。これが事実なら米国は、「核保有の明確な証拠がある」として戦争を仕掛けたイラクと同じ轍を踏むことにならないか。フセインが打倒されイラクの体制が変わった後、イラクに核兵器が存在していなかった事実が明らかになる。米国の安全保障を脅かすファーウェイ。5Gに必要な通信機器は40キロの重量に軽減されている。性能が非常に優れている上、設置コストもかからない。発展途上国に限らず先進国でも喉から手が出るほど欲しい通信機器だ。
それでもアメリカ政府はファーウェイ排除の手を緩めようとしない。安全保障というよりは将来の覇権に関わるからだ。そうである以上ファーウェイ排除の流れは止まらないだろう。日本贔屓の任CEO。東日本大震災の時にいの一番に被災地に駆けつけたのは、いまカナダで軟禁されている孟副社長だという。任CEO曰く、「ネットワーク技術の発展は人類の発展を加速させる」「そうなれば経済的に豊かでないどんな地域でも、人々は教育を受けることができる。小さな子どもたちは世界中を見られるようになる」。覇権国として世界をリードしてきた米国。ある面で自国を犠牲にして世界を発展させてきたことも事実だ。その米国が自国第一主義にひた走ることも理解できないわけではない。格差が拡大する現状の中でグローバリズムか保護主義か、先進国、途上国を問わず世界は大きな分岐点に差し掛かっていることだけは確かだ。
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