週末は国際舞台で様々なイベントが催された。トランプ大統領は英国、フランス、アイルランドを訪問。英国の合意なき離脱を促すなど相変わらずのお騒がせぶり。訪英中に対メキシコ関税の無期限延期を発表するなど、場当たり外交の本領を発揮した。いくら強気で押しまくる大統領といっても、足元の経済が急減速する可能性があれば米国の有権者は許さないだろう。大統領選挙を控えてトランプ大統領のディール外交に陰りが見え始めたような気がしないでもない。そんな中で注目されたのは福岡市で開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議だ。米国のムニューシン財務長官が出席した。同長官は中国人民銀行の易鋼総裁と会談した。メディアは貿易交渉か、と期待したが進展はなかったようだ。

さはさりながら、NHKの報道で気になる動きがあった。ムニューシン財務長官は9日、CNBCテレビのインタビューで、「交渉が進展すれば中国の通信機器大手、ハーウェイがアメリカの部品などを調達できなくしている措置を緩和する可能性に言及した」というのである。中国に妥協を促すアメであることは確かだが、米国側はこれまで「貿易交渉とハーウァイ問題は別」としてきた。そのハーウェイに対する規制を緩和しようというのだ。同長官はライトハイザーUSTR代表とともに米国側の交渉責任者である。その長官がハーウェイに対する措置の緩和を持ち出したのである。直感的に思ったのは「米国も内情は厳しいのだろう」ということだ。月末の首脳会談を控えて中国は一向に譲ろうとしない。このまま突っ張れば新たな追加関税の実施をやらざるを得なくなる。

ムニューシン長官も内心は複雑だろう。できたら新たな追加関税は避けたい。だが、中国は一向に歩み寄って来ない。大統領からは「なんとかしろ」とハッパをかけられている。でも米国から譲歩することはできない。そんなことを大統領が許すわけがない。窮余の一策で思いついたのがハーウェイだ。これを餌に交渉のきっかけを作りたい。意向はすでに易綱総裁に伝えてある。あとは中国の反応を待つだけだ。以上はNHKの報道をきっかに思いついた単なる想像にすぎない。G20財務相・中央銀行総裁会議も米中の貿易摩擦が最大のリスクだという認識で一致した。世界中が注目する中での財務長官の発言である。これに対して新華社は8日、「中国、重要技術の対米輸出制限を検討」と報じている。これは「中国は決して妥協しない」とのメッセージだ。水面下の殴り合いはまだまだ続きそうだ。