逃亡条例を巡って抗議行動が続く香港。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は15日記者会見し、逃亡犯条例の改正を「無期限」に延期すると発表した。だが民主化を要求するデモ隊はこの措置に納得せず、「撤廃」を要求して16日に再度大規模デモを実施した。主催者側の発表で参加者は200万人。香港史上最大規模のデモに膨れあがた。香港の人口は750万人。なんと四人に一人がこのデモに参加したことになる。一国二制度の形骸化を目論む中国にとってこれは痛手だろう。今月末には大阪でG20首脳会議がある。習近平国家主席の出席の有無は依然として確認されていないが、中国にとってはタイミングが悪すぎる。香港当局の無期延期の判断を支持せざるを得なくなった。が、それでも香港市民は中国になじまない。

逃亡条例に対する批判は香港市民に止まらなかった。米国議会に一国二制度を前提に容認していた香港に対する優遇措置を見直すための法案、「香港人権・民主主義法案」が提出された。中国にして見れば米国とは貿易問題に加えて香港問題も抱え込んだことになる。G20首脳会議が控えていることもあって、中国は譲歩せざるを得なくなったのだろう。中国に対する国際世論の風圧は強まる一方である。香港の民主化勢力と米議会が中国の譲歩を引き出した。一方のイラン。二隻のタンカーに対する攻撃はイランが仕掛けた、とする米国の主張に真っ向から反撃している。真実はどちらかいまのところ分からない。ポンペイオ国務長官は「疑いよの余地はない」とイランを攻撃する。証拠としてイラン革命防衛隊による不発弾の取り外し映像や、米国の無人偵察機に対するミサイル攻撃などをあげている。

米国の主張に英国が早速同調した。これまでイラン問題で米国との間に微妙な温度差があった英国は、タンカー攻撃の責任論で米国と足並みを揃えた。これに対してイランは上海協力機構の首脳会議に合わせてロシアのプーチン大統領と会談、イランに対する支援を求めた。香港、イラン問題の背後にあるのはロシア・中国連合対米国の対立の構図だ。これにシリアやトルコ、イスラエルにサウジなど中東諸国が絡む。香港問題の延長線上には台湾問題もある。ベネズエラにも同じ構図の対立がある。米国はイランの核合意から一方的に離脱、保守強硬派が主導権を握って国際世論を引っ張り始めている。香港問題では民主党も優遇策の見直しに積極的に動いている。緊迫する対立の構図、そんな中で大阪のG20首脳会議は開かれる。