中国の習近平主席が20日と21日に北朝鮮を訪問する。28日から始まるG20に出席するかどうか、トランプ大統領との首脳会談を行うかどうか、いまだに発表がない。こうした中での北朝鮮訪問であり、金正恩委員長との首脳会談である。生き馬の目を抜くと言われる国際政治の壮絶な駆け引きを垣間見るような訪朝だ。この訪朝の意味をどう読み解くか、今朝の時点で多くのメディアが沈黙している。そうした中で産経新聞と毎日新聞が大きく取り上げている。いずれにしろこの訪朝で習主席のG20出席は確実になり、トランプ大統領との首脳会談も実現するだろう。だが、問題は何も解決されない。政治的な駆け引きだけが踊る。個人的に大嫌いな金委員長の巧妙な手練手管に改めて嫌悪感を感じた。
習主席の訪朝は北朝鮮の招待を受けたものだという。ハノイでの米朝首脳会談が決裂したあと、北朝鮮の非核化をめぐる動きは止まったままだ。国内的な経済不振から制裁解除を何としても実現したい北朝鮮にとっては、完全な非核化を求めるトランプ大統領の頑な方針を、何としても“翻意”させたいところだろう。年末までは米国の方針転換を待つと公言している金正恩委員長だが、国内の経済的疲弊はそんな悠長なことをいっていられる状況ではない。プーチン大統領と首脳会談を行い、今度は後ろ盾の習主席を招待した。いずれも米国を牽制する狙いだろう。「トランプさん、経済制裁を緩和しないと中ロと組みますよ」、トランプ大統領に暗に脅しをかけているというわけだ。
毎日新聞によるとトランプ氏は金委員長との関係を「非常に強固だ」と繰り返す一方、「状況が変わる時が来るかもしれない」と含みをもたせているという。トランプ氏も駆け引きでは譲らない。習主席は米中の貿易問題に香港問題が重なってがんじがらめの状態。香港問題で米国は一国二制度の見直しにも言及している。貿易交渉を決裂させることもできなければ、香港問題で譲歩することもできない。さりとてG20を欠席すれば世界中の笑い者になる。そんな中で満を持して持ち出したのが「北朝鮮カード」である。今回の訪朝で北朝鮮の意向を国際舞台で代弁する準備が整う。トランプ大統領も金委員長の意向には耳を傾けるだろう。かくして貿易問題と香港問題に集中するはずだった首脳会談の焦点が拡散する。そして大山鳴動、G20は何も決められないまま閉幕する。
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