元ハンセン病患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、政府は9日、控訴しない方針を決めた。安倍晋三首相が「異例のことだが、控訴をしない」と表明。政府内には控訴して高裁で争うべきだとの意見が大勢だったが、家族への人権侵害を考慮し、最終的に首相が判断した。原告側が控訴しなければ、地裁判決が確定する<以上は朝日新聞デジタルからの引用>。参院選挙中の異例の決断である。家族の苦しみを思えば当然の決断だろう。裁判に勝ったからと言って家族の苦しみがなくなるわけではない。それでも勝訴することで癒される面もある。政府内にあった「控訴すべき」との根強い意見を押し切っての決断。仮に選挙対策という側面があったとしても、控訴断念の決断は評価できる。

この件に関連して朝日新聞は、9日朝刊で「政府、控訴へ」との記事を一面トップで掲載した。首相の決断でこの記事は結果的に誤報になった。同紙は今朝の朝刊で誤報になった経緯を説明している。政府が控訴するかしないか、取材を進めていた朝日新聞は、官邸幹部への取材で控訴の流れに変わりはないと判断。「8日、ハンセン病関連で首相が9日に対応策を表明するという情報とともに、控訴はするものの、経済支援を検討しているとの情報を得ました。さらに8日夕、首相の意向を知りうる政権幹部に取材した結果、政府が控訴する方針は変わらないと判断しました。このため朝日新聞は1面トップに『ハンセン病家族訴訟、控訴へ』との記事を掲載することを決めました」と説明している。理由はどうで取材の詰めが甘かったことに変わりはない。

朝日新聞によると、「ハンセン病はらい菌が原因で起きる感染症。感染力は非常に弱いが、重症化すると顔や手足が変形する。国は1907年に隔離政策を開始。40年代に特効薬が登場して以降、治る病気となり、治療後は他人に感染することがないことも知られるようになった。だが、国は96年のらい予防法廃止まで隔離政策を続けた」。国は完全に間違った政策をとり続けてきた。アンチ安倍政権の立場を鮮明にする朝日新聞は、控訴という事実を報道することによって安倍政権にダメージを与えようと功を焦ったのだろう。熊本地裁の判決は元ハンセン病家族の苦しみとは別に、国の失政とメディアの誤報を浮き彫りにした。情報化社会の中で日々われわれは、失政と誤報の中で生きているのかもしれない。