【ルクセンブルク時事】欧州初開催となった今回のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の年次総会では、金立群総裁が欧州内で警戒感が強まる中国政府の巨大経済圏構想「一帯一路」と距離を置く姿勢を強調。AIIBへの懸念払拭(ふっしょく)に腐心した。

 「類似点はあるが、運営体制は大きく異なる。われわれの銀行は国際標準で運営する多国間の開発機関だ」。金総裁は記者会見で、新興国に過剰融資する「債務のわな」が問題視される一帯一路とAIIBの違いをアピールした。

 さらに「もちろん債務問題は引き起こさない」と主張。途上国のインフラ投資には「量を得るため質を犠牲にすることは決してない」とも語った。

 2016年1月のAIIB開業を前に、英独仏を含む欧州各国は雪崩を打って参加を表明した。ただ、ここにきて欧州では、一帯一路戦略で東欧や南欧にも影響力を強める中国への警戒感が広がっている。

 今年3月には欧州連合(EU)懐疑派政権のイタリアが先進7カ国(G7)で初めて一帯一路に参画。危機感を募らせた独仏首脳が同月、中国の習近平国家主席との会談で中国による「欧州分断」の動きをけん制した。またEU欧州委員会は対中戦略の転換を表明し、中国による欧州投資の規制強化などに乗り出した。

 欧州のインフラはAIIBの投資対象とはなっていないが、中国主導の運営への疑念は拭い切れていないのが実情だ。金総裁は総会で「欧州は創設に並外れた貢献をした。AIIBには欧州的な特徴がある」と訴えたが、真の信頼関係構築にはまだ時間を要しそうだ。