ドイツが財政出動を検討しているとブルームバーグ(BB)が報じている。このニュースはちょっと前からちらほら報道されていた。最初に流したのはロイターだったような気がする。頑固一徹に財政均衡主義を貫いてきたドイツが、とうとう赤字国債の発行を検討しているというのだ。これを後押しするようにドイツ連邦銀行(中央銀行)がきのう月報を公表、「同国経済がリセッション(景気後退)に陥ろうとしている可能性がある」と警告した。ドイツがリセッションに陥れば、EU全体に大きな影響が出る。EUの盟主を自認するドイツとしてはこうした事態を容認できないのだろう。財政出動による景気の下支えについて検討を始めたようだ。

BBの記事には、「この措置は大規模な失業の発生を防ぐために国内経済を支え、消費者支出を押し上げることを目指す」とある。「住宅のエネルギー効率を高めるための補助や短期雇用の促進、社会福祉を通じた所得増加策が検討されていると関係者は語った」という。ショルツ財務相はその前日(18日)、「経済危機が生じた際には500億ユーロ(約5兆9000億円)の追加支出を用意できる」と示唆している。メルケル首相も先週、ドイツ経済が「困難な局面に向かっている」との認識を示した上で、「状況に応じて対応すると述べた」と伝えられている。米中の貿易摩擦を震源とする景気後退に対抗すべく、あのドイツまでもが赤字国債の発行を伴う財政出動を検討し始めたのだ。FRBのパウエル議長は7月、景気後退を防ぐための「予防的利下げ」に踏み切った。こうした動きが財政にも波及しそうなムードになっている。

話はそれるが、きのうの時事ドットコムを見ていたら「東欧経済、好調続く=内需主導で」という記事が目についた。ドイツなど西欧主要国の景気が米中貿易摩擦の影響で低迷するのを尻目に、「東欧諸国の経済が好調を維持している。国外のマイナス要因にさほど左右されず、賃金上昇を追い風に個人消費がけん引する成長が特徴だ」とあった。ドイツの景気低迷は自動車を筆頭とする対中国向け輸出の不信が大きな原因である。これに対して東欧諸国は内需主導型の経済で、貿易戦争の影響をあまり受けない構造になっている。グローバルな時代に鎖国をすることはできないが、内需主導の経済運営に徹すればそれなりに好調さを維持できるということだろう。日本も早めに内需主導型の経済に転換すべきだ。