先進7カ国首脳会議(G7)が今日終了する。この会議に関連してこの週末に報道されたニュースは、会議同様に方向感がなく何が決まり、何が決まらなかったのか、読み解くのに苦労する内容ばかりだ。トランプ大統領は直前に「なんでこの会議に出席しなければならないのか」と駄々をこね、「時間の無駄だ」とわがままを言っている。別にトランプ大統領を擁護するつもりはないが、G7が各国首脳の自己主張の場になっているところに、いまの国際社会の危機があるような気がする。トランプ大統領の自国第一主義に最大の要因があると思うが、同時に世界中で利害が対立する問題が表面化しているところにもG7混迷の要因がある。だからこそG7の主導力が必要なのだが、それを実行する政治家が見当たらない。

週末のメディアはG7を舞台に繰り広げられた首脳会談の話題で埋め尽くされた。多くのスペースが割かれたのは米中の貿易問題だが、G7開催中に米中は制裁関税の応酬に終始した。中国が米国の制裁関税第4弾への報復として米国からの輸入750億ドル相当に10%の関税を課すと発表すれば、すかさず米国が対抗して既存の制裁関税の税率を引き上げる始末。まるで子供の喧嘩だ。主催国フランスのマクロン大統領とトランプ大統領は、デジタル課税にワイン課税で応酬を繰り返しており、IT時代のデジタル課税はどうあるべきか将来を見据えた議論はどこにもない。イラン外相を招待したマクロン大統領は会議の合間にイラン外相と会談、これによってイラン情勢に変化があるのかなのか、よくわからない。マクロン氏がG7の総意としてイランと交渉すると発表すれば、トランプ氏は「合意したつもりはない」と反発。何がどうなっているの、ニュースを見ていてもわからない。

米中の貿易戦争めぐるトランプ氏の「再考」発言を巡って、大統領の報道官がメディアの「誤解」を指摘する場面もあった(「トランプ氏、米中対立激化「再考」-その心は関税もっと引き上げたい」<bloomberg日本語版>)。日米通商問題では米国が日本の記者が同席しない記者会見を急きょ設定(「日米首脳、混乱の合意発表=首相同行記者不在で実施」<時事ドットコム>)するなど、これは大統領選挙を意識した茶番劇。半面、ホルムズ海峡をめぐる有志連合結成や英国のEU脱退問題、イタリア情勢、世界景気、中国の人権問題、メキシコの壁、環境問題、北朝鮮情勢、日韓問題など現下の世界的な課題について、G7首脳が真剣に議論を交わした形跡はどこにもない。G7の不要論は今後勢いを増すような気がする。課題があるから首脳が集まって会議をするのだが、会議そのものが多様化する個別紛争の代弁者になってしまっている。G7はあまりにも非力だ。