ムニューシン米財務長官はきのう、トランプ政権のもとで超長期国債の発行が「非常に真剣に検討されている」ことを明らかにした。ワシントンでブルームバーグ(BB)とのインタビューで語ったもの。同通信は「これが実現すると16兆ドル(約1700兆円)の市場規模を誇る米国債市場の歴史的変革となる」としている。超長期国債といってもピンとこないが、どうやら償還期限が50年とか100年の国債を意味するようだ。BBによると「100年前というのは、米国で禁酒法が制定された年」だそうだ。100年国債が償還を迎えるのは今から100年先。その時米国は世界中の投資家に信頼されているのだろうか、ひょっとすると覇権国は中国に変わっているかもしれない。

日韓関係が泥沼化している最大の要因は、お互いの信頼関係が失われていることにある。国家間の関係に限らず市場経済をベースとした経済的な取引にとって最も大事なことは、お互いの信頼関係である。100年国債を発行するということは、向こう100年間、米国は信頼に値する国であり続けると宣言するようなものである。その根拠はと問われれば、簡単には答えられない。トランプ政権にとどまらずこれから生まれる米国の政権が、国家として破綻しないことを、科学的根拠をもって投資家に約束しなければならない。これが意外と難しいのである。リーマンショックが起こった2009年にも同様の検討が行われた。だが、国家の信用を100年にわたって維持する論理は簡単には見つからない。超長期国債の発行は、いうは安く実行するのは難しいのである。

米国の景気は様々な問題を抱えながら比較的底堅く推移している。理由ははっきりしている。膨大な財政赤字を気にせずトランプ政権が積極的な財政運営を行なっているからだ。とりわけトランプ減税の貢献が大きい。個人消費を後押し、景気という面では米国の“一人勝ち”という状況を作り出した。財政赤字は膨らむが、物価はほとんど上昇していない。これが世界の七不思議の一つで、昨今話題のMMTの理論を実践しているようなものだ。超長期国債に限らず償還期限のない永久国債の発行もこれまで何回も提案、提言されている。それに比べれば100年国債のほうが難易度は低い。それでも具体化するのは至難の技だ。どうやったら100年間国家が破綻しないことを証明できるのか。「通貨発行権を持っている国の国債はデフォルトしない」、異端の理論と言われるMMTが意外にも答えを持っているのかもしれない。