ブルームバーグ(BB)の記事をみて「やっぱりそうか」と納得した。問題の記事は「日本企業の手元現金が過去最高-大半の国のGDP上回る506兆円超」(9月3日10:01配信)だ。記事によると「最新の届け出に基づく日本の上場企業の手元現金は506兆4000億円と過去最高。安倍晋三首相が企業の現金保有を減らすと公約し第2次政権を発足させた数カ月後の2013年3月に比べ、3倍余りに膨らんでいる」とのこと。最新の届け出が何を指しているかわからないが、日本の上場企業はGDPに匹敵するようなキャッシュを蓄えていることになる。可処分所得の伸び悩みに苦しんでいる家計からみれば、「羨ましい」を通り越して「腹立たしい」限りだ。「なぜ給料に回さないのか」、批判が出るのは当たり前だ。

現状についてBNPパリバのアジア太平洋地域株式シニアポートフォリオマネジャー、フェリックス・ラム氏は、「用心深過ぎる最高経営責任者(CEO)たちが不必要なほど多くの現金を保持しているというだけでは説明できない」(BB)と話す。企業側も黙々と貯め込んでいるだけではないようだ。ゴールドマン・サックス・グループの試算によれば、日本の上場企業の自社株買いは昨年に発表ベースで約600億ドル(約6兆3700億円)に達した。ソシエテ・ジェネラルによると、配当支払いも今年これまでに8兆4000億円と過去最高に上っている。相対的にみて額は少ないが、企業は利益配分にも相当力をいれている。それでもこれだけのキャッシュが銀行口座に積み上がっている。お金が銀行に止まっていて出てこないのだ。江戸っ子は「宵越しの金は持たない」と言った。それが人生の美学であり哲学だった。

お金は回転(流通)することによって価値が増える。銀行にじっと止まっているだけでは、いくらお金がっても何の役にも立たない。お金が回らない、これが日本経済の現実なのだ。どうしてお金が回らないのか。デフレだからだ。日銀は異次元緩和と称して大量の資金を金融機関の日銀口座に積み上げている。だが、これは生きた金ではない。金融機関の口座に積み上がっているだけの死に金だ。生きた金を作るにはどうすればいいか。やり方は色々ある。企業が賃金を大幅に上げる。高額所得者を除いて大胆な所得税減税を実施する。消費税減税を行う。小中学校の建て替えやインフラ整備に果敢な財政出動を行う。ひょっとすると金利を引き上げれば寝ていた金が動き出すかもしれない。異次元緩和も財政再建もデフレには効かないことがはっきりした。次なる課題の年金改革もデフレ要因。デフレ脱却を目指すアベノミクスが実は、デフレ促進役になり始めている。